バルディビア地震

バルディビア地震（1575年）の詳細

1575年12月16日、チリ南部沿岸で発生したバルディビア地震は、南緯39.8°、西経73.2°付近を震源とする巨大地震でした。表面波マグニチュードはM8.5と推定されていますが、歴史的な記録の制約から、正確な値は確定していません。この地震は、コンセプシオンからカストロにかけて広範囲で揺れが観測され、インペリアルとバルディビアでは大規模な津波、コンセプシオンとカストロでは津波が記録されました。また、インペリアル、バルディビア、カストロでは海岸の沈降も確認されています。

特にバルディビアでは、津波によって100名が犠牲となり、地割れや地滑りが多発しました。地滑りによって形成された天然ダムは、翌年4月に決壊し、1200名ものインディオが命を落としました。余震は40日間にわたって続いたと記録されています。

地質学的調査からの考察

この地域では、過去にも1737年、1837年、そして1960年にも巨大地震が発生しています。1737年の地震は記録が少なく、1837年の地震は日本にまで津波が到達した記録がありますが、地殻変動の範囲は南部地域に限られ、1575年や1960年の地震に比べると規模が小さかったと推定されています。

一方、1575年の地震は、モーメントマグニチュードMw9.5を記録した1960年のチリ地震とほぼ同等の規模であったと考えられています。当時、未開拓の地であったため、記録が不足している部分もありますが、現存する記録からは、1960年の地震とほぼ同じ程度の揺れ、津波、そして地殻変動が発生したと推測されます。

マウジン川河口付近で行われた地質調査では、トレンチ調査によって、1960年のチリ地震に加え、1575年前後、1280-1390年頃、1020-1180年頃、430-660年頃、紀元前80-紀元220年頃の津波堆積物と地盤沈降の痕跡が発見されました。1737年や1837年の地震の痕跡は見つからず、特に巨大な地震のみが地層に痕跡を残していることが判明しました。これらの巨大地震は約300年周期で発生していると推定されています。また、立ち枯れ木の調査から、1837年と1737年の地震では1960年の地震ほどの大規模な地盤沈降はなかったと推測されています。

プレート運動との関連

1837年の地震から123年後に発生した1960年のチリ地震では、断層が20〜30mも滑りました。これは、この地域でのプレートの相対速度が年間8.3cmであることからすると、約250〜350年分の歪みが蓄積したことに相当しますが、平均して300年間隔で巨大地震が発生しているという調査結果と矛盾しません。

史上最大級の地震か

チリのカトリカ大学のマルセロ・ラゴス教授は、この地震によって発生した地滑りの跡を発見し、その規模が1960年のチリ地震（M9.5）の4倍にも達していたことを明らかにしました。ラゴス教授は、1575年のバルディビア地震が史上最大級の地震であった可能性を示唆しています。

このように、1575年のバルディビア地震は、その規模、影響、そして地質学的な痕跡から、過去に発生した巨大地震の中でも特筆すべきものであり、地震学の研究において重要な事例となっています。

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