バルーニング (動物)

バルーニング: 空を舞うクモたちの不思議

概要

バルーニングとは、クモ類の若い個体や一部の蛾の幼虫が、細い糸を使用して空を飛ぶ現象を指します。この現象は「雪迎え」とも呼ばれ、冬の季語としても親しまれています。

クモ類の繁殖と去る道

クモ類は、卵を糸で包み卵嚢を作成します。卵嚢の中で孵化した幼虫は、最初の数令では卵嚢の中で過ごした後、二令になってから外の世界へと飛び立ちます。多くのクモたちは、しばらくの間は卵嚢の周囲で集まって過ごすことを「まどい（団居）」と呼びますが、その後、子グモたちは周囲の草や木の上へと移動し、最終的には飛行を試みます。

バルーニングのメカニズム

子グモがバルーニングを行う際、それぞれの個体は周囲の草や木に登ります。原始的なクモ類であるジグモなどは、糸を出してその先にぶら下がり、風に吹かれて糸が切れるタイミングで飛び立つことがあります。一方、高等なクモ類は、草や木の先端に達すると、体を持ち上げ、腹部を上に向けて数本の糸を出します。この糸は上昇気流に乗り、クモが脚を離すと共に空中へと吹き上げられます。これは、タンポポの種子が風に乗って飛ぶ様子に似ています。

空への旅

バルーニングは、しばしば長距離に及ぶことがあります。報告によれば、航空機にクモが引っかかることもあり、大洋の沖合で糸が船に絡まることもあります。このように、空を飛ぶ能力はクモ類の分布拡大に大きく寄与すると言えます。実際に、生物がいない場所に最初に現れる生き物の一つにクモが挙げられることがあるのです。

地域による変異

バルーニングを行うクモは、その移動能力によって地域による変異が少ないことが観察されています。一方で、バルーニングをしないクモ類には、地域による変異が多く見られます。原始的なクモの中には、地方ごとの種分化がしばしば見られるキムラグモやトタテグモなどがありますが、これらはともにバルーニングを行いません。

人々の関心

クモの子が木に登る際に糸を引きずる様子は、時にその周囲を白いリボンのように飾ります。さらに、飛ぶ糸が風に漂うことで綿くずのように見えることがあり、目を引く現象として認識されています。かつて西洋ではこの現象を「ゴッサマー（gossamer）」と呼び、シェイクスピアの作品にも触れられています。

日本では、クモの移動を「雪迎え」と称する地域がありますが、この現象がクモであることが明らかになったのは、昭和に入ってからのことです。クモの研究者である錦三郎は、特に山形県での「雪迎え」について詳しい研究を行っています。

他の生物のバルーニング

バルーニングはクモだけに限らず、他の動物にも見られます。例えば、ハダニ類も糸を使って空を移動することで知られています。これに加え、ミノガの一部も幼虫段階で糸を出して空中を漂うことが観察されています。バルーニングのメカニズムは、自然界における多様性を示す一例となっているのです。

もう一度検索