バローゾ委員会

バローゾ委員会：欧州統合を推進した10年間

ジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長率いる欧州委員会（2004年～2014年）は、欧州統合の歴史において重要な役割を果たしました。2期制で、各加盟国から1名ずつ委員が選出され、2010年には2期目が発足しています。バローゾ委員長は、当初は「最小公分母」的な存在と見られていましたが、委員会人事案や政策推進を通じて、その手腕を発揮しました。

委員長の選出と人事：困難な道のり

2004年の委員長選出は、容易ではありませんでした。ベルギー首相ギー・フェルホフスタットやアイルランド首相バーティ・アハーンなども候補に挙がりましたが、最終的にバローゾが欧州人民党などの支持を得て選出されました。しかし、バローゾが最初に提案した委員会人事案は、司法・自由・安全担当委員候補の保守的な発言が問題となり、欧州議会で否決されました。この危機を乗り越えるため、バローゾ委員長は人事案を修正し、再提出。これによって、委員会は2004年11月22日にようやく発足しました。2007年にはルーマニアとブルガリアの加盟に伴い、委員が2名増員されました。

委員候補の選出過程では、欧州議会による聴聞会が行われ、複数の候補者の適格性に疑問が呈されました。特に、司法・自由・安全担当委員候補のロッコ・ブッティグリオーネ氏の保守的な発言は大きな問題となり、欧州議会からの強い反発を受けました。この結果、バローゾ委員長は人事案を撤回し、修正案を提出。ブッティグリオーネ氏に代わりフランコ・フラッティーニ外相が候補となりました。この修正案は、欧州議会の承認を得て、委員会の発足は実現しました。

主要政策と成果

バローゾ委員会の任期中は、多くの重要な政策が推進されました。その代表的なものが、「ボルケシュタイン指令」と「REACH指令」です。

ボルケシュタイン指令は、欧州連合のサービス市場の自由化を目指すものでした。この指令は、労働組合などからの反発や欧州議会からの修正要求など、多くの困難を伴いましたが、最終的には合意に至り、欧州経済の活性化に貢献しました。

REACH指令は、化学物質の登録、評価、認可、制限に関する指令です。環境や人体への危険性のある化学物質の使用を制限することを目的としたもので、欧州委員会が作成した単一法令としては最大規模となりました。環境団体からの批判を受け、欧州議会で規制内容が一部修正されましたが、世界的な基準となることが期待されています。

また、バローゾ委員会は、欧州連合域内のローミング料金の規制、気候変動対策、マイクロソフトに対する独占禁止法違反の制裁など、様々な分野で重要な政策を推進し、成果を上げています。

2期目への道：再任と新たな課題

バローゾ委員長は、2009年の欧州議会議員選挙後、再任を目指しました。欧州人民党をはじめとする複数の会派から支持を得て、再任を果たしました。2期目では、リスボン条約発効の遅れや世界的な金融危機といった新たな課題に直面しましたが、気候変動対策や国際協力などの分野で積極的に政策を推進しました。

委員会の構成と委員長の役割

バローゾ委員会は、委員長と26名の委員で構成されていました。各加盟国から1名ずつ委員が選出され、その中には女性委員も多数含まれていました。委員長であるバローゾ自身は、欧州人民党に所属していました。

バローゾ委員長は、委員会運営において強いリーダーシップを発揮しました。委員長の主体性が強く、従来の委員長と比較して、委員長の権限が強化されました。エネルギー政策や気候変動問題など、委員会全体で取り組む姿勢が見られました。しかし、その一方で、大国からの圧力に屈したと批判されたこともありました。

結論

バローゾ委員会は、欧州統合の進展に大きく貢献した一方で、委員選出過程における困難や、委員長の強いリーダーシップによる賛否両論など、様々な課題を抱えていました。その活動は、欧州委員会の歴史において重要な意味を持つものであり、今日の欧州統合のあり方に影響を与え続けています。 この10年間の活動は、今後の欧州委員会の運営に貴重な教訓を与えてくれるでしょう。

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