バンコク港

バンコク港：タイの物流を支える歴史ある港湾

バンコク港は、タイの首都バンコクにある重要な港湾施設です。チャオプラヤー川の河口から約30km上流に位置し、1951年の開港以来、タイの海上輸送の要として発展してきました。かつては同国最大の港でしたが、1997年にレームチャバン港が開港してからは、第2位の規模となっています。

港湾の構造と特徴

バンコク港は、チャオプラヤー川左岸に点在する岸壁で構成されています。公営のクローントゥーイ港（PAT）を中心に、船舶の着岸バース、税関事務所、コンテナヤード、保税倉庫などの施設が整備されています。広義には、BMTやSCTといった私営のコンテナターミナルも含まれます。

しかし、港湾の水深は8.5〜11mと浅く、入港できるコンテナ船のサイズには制限があります。喫水8.2m、船長172m以下の船舶しか入港できないため、近年のコンテナ船大型化に対応できていないという課題があります。

歴史：日本の技術が貢献

バンコク港は、チャオプラヤー川の河川港として発展しました。1937年には、タイ政府が巨額の予算を投じて港湾建設を計画。設計は国際コンテストで決定することになり、日本を含む22カ国が参加しました。

日本の外務省は内務省土木局に設計を依頼し、わずか半月で設計案を完成させました。その結果、日本案が最終選考で選ばれ、バンコク港の建設に日本の技術が貢献することになりました。

問題点と対策

バンコク港には、水深が浅いことによる大型船の入港制限という根本的な問題があります。チャオプラヤー川を流れる土砂の堆積により、定期的な浚渫も必要です。また、バンコク中心部に近いことから、交通渋滞の一因となっているという批判もあります。港湾後背地の拡張にも物理的な制約があり、課題が山積しています。

これらの問題を解決するため、タイ政府は1991年にレームチャバン港を建設し、大型船の受け入れを推進してきました。その結果、大型コンテナ船の多くがレームチャバン港を利用するようになり、一定の成果を上げています。

公営港と私営岸壁

バンコク港と言った場合、一般的にはクローントゥーイ区にある公営港を指します。ここは、タイ港湾庁（PAT）が運営しており、376ヘクタールの敷地を有しています。一方、BMT、UTT、SBT、BDS、TPT、SCTといった私営のコンテナターミナルも、バンコク港の重要な一部を担っています。

鉄道貨物輸送の歴史

バンコク港のあるクローントゥーイ地区には、1910年にタイ国鉄の貨物線が建設されました。メーナーム駅を終点として、港湾への臨港線が敷設され、海陸接続の拠点として機能しました。しかし、1990年代以降は、交通渋滞の緩和のために、レームチャバン港や内陸コンテナデポへの移転が進められています。

今後の展望

バンコク港は、歴史的に重要な港湾としての役割を果たしてきましたが、大型船に対応できないという問題を抱えています。今後、レームチャバン港との連携や、内陸輸送網の整備などを通して、タイの物流をより効率的に支えていくことが期待されます。

参考文献

工事画報社発行『土木建築工事画報』1925年（大正14年）-1940年（昭和15年）
第13巻第12号（P264-265） 『断然世界を圧倒せる我港湾技術』1937年（昭和12年）12月
『王国の鉄路 タイ鉄道の歴史』（柿崎一郎著、京都大学学術出版会、2010年）

関連項目

バンコク
チャオプラヤー川
レームチャバン港
マープタープット工業港
ソンクラー港
ラノーン港
ラートクラバンICD

外部リンク

バンコク港公式ホームページ（タイ語）
バンコク港公式ホームページ（英語）

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