バンドゥルマ (貨客船)

バンドゥルマは、19世紀後半にイギリスで建造された貨客船で、その歴史は数々の変遷を経て、トルコ共和国の誕生に重要な役割を果たすことになります。

建造と初期の航海

バンドゥルマは、1878年にスコットランドのグラスゴーで、マックインタイルペイズリー・ヒューストン&カルデット造船所にて、279英トンの貨客船として誕生しました。当初は「トロカデルト」という名前で、デュセイ&ロビンソン社によって5年間運用されました。その後、ギリシャのH・プシチャ・プレウス社に売却され、「キュミ」と改名。ロンドンのピール港に登録されました。さらに1890年には、ギリシャ人船長アンデリィーディスに売却されましたが、1891年の事故で沈没。しかし、同年のうちに引き上げられ、イスタンブールのラマ・デラシモ社に売却され、再び「クイム」としてイスタンブール港に登録されました。

トルコ船籍へ

1894年、この船は当時の海洋管理局にあたる王室管理部（İdare-i Mahsusa）に買い取られ、「パンデルマ」と改名され、トルコ国旗を掲げることになりました。マルマラ海沿岸の各都市、テキルダー、ミュレフテ、シャルキョイ、カラビガ、エルデッキを結ぶ旅客・貨物輸送に利用されました。1910年、王室管理部の法令改正により、オスマン帝国交通局（オスマン帝国海洋管理局）が設立。この際、船は「バンドゥルマ」と改名され、定期便として運用されました。

ムスタファ・ケマルとの関わり

バンドゥルマが歴史に名を刻むのは、1919年5月19日、ムスタファ・ケマル・アタテュルクとその軍の兵士たちをイスタンブールからサムスンまで輸送したことです。この航海は、トルコ共和国の独立戦争において重要な転換点となりました。ムスタファ・ケマルは、オスマン帝国軍の解体過程の調査と治安維持の任務を与えられ、第9軍視察官としてバンドゥルマに乗船しました。この航海後も、バンドゥルマは定期船として運航を続けましたが、1924年にトルコ海洋局（Türkiye Seyrüsefain İdaresi）によって運用が停止されました。

その後

1925年、バンドゥルマはトルコ人実業家ボズマジュ・イルハミに売却されました。しかし、わずか4ヶ月後には解体され、その歴史に幕を閉じました。

レプリカの建造

バンドゥルマの歴史的価値を後世に伝えるため、1999年にサムスンでレプリカ建造プロジェクトが開始されました。2001年に完成したレプリカは、2003年5月18日に博物館として一般公開され、現在もその姿を見ることができます。

このように、バンドゥルマは、その誕生から解体まで、数々の変遷を経て、最後はトルコ共和国の歴史を語る上で欠かせない存在となりました。

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