バーデン大公国邦有鉄道IVh型蒸気機関車

バーデン大公国邦有鉄道IVh型蒸気機関車

バーデン大公国邦有鉄道IVh型蒸気機関車（通称：IVh型）は、バーデン大公国邦有鉄道によって1918年から1920年にかけて製造された急行用蒸気機関車で、後のドイツ国営鉄道（ドイツ国鉄）18.3形となりました。この機関車は、車軸配置2'C1'（パシフィック）をもつ複式4気筒テンダー機関車であり、高速旅客列車の牽引に特化した設計が特徴的です。

製造の背景

20世紀初頭、バーデン大公国邦有鉄道は、鉄道網の整備や輸送需要の増加に対応するため、新しい機関車の開発を進めていました。ドイツの機関車メーカーであるJ.A.マッファイ社との協力により、機関車の設計が進められ、1902年にはIId型機関車が誕生しました。このプロジェクトは、鉄道の発展と新技術の導入が重要視されていた時期に行われており、特にIVf型機関車はその当時の最新技術を用いて製作されています。

IVf型は成功を収めたものの、高速運転において動輪径が小さく、シリンダーの往復速度を上げる必要があり、機構部に故障が多発していました。そのため、1915年に新たな急行機関車の設計が必要とされ、1918年に試作車が完成、続いて量産が始まったのです。

形式の構造

IVh型は、広火室を持つ過熱式ボイラーを搭載した複式4気筒テンダー機関車で、従来のIVf型と比べて動輪径を2,100 mmに拡大しました。この設計変更により、運転速度が大幅に向上し、最高速度は約110 km/hに設定されました。また、設計にはドゥ・グレーン式の要素が取り入れられ、内側高圧シリンダーと外側低圧シリンダーの駆動効率が改善されました。

ボイラーと電装

IVh型のボイラーは、当時ドイツで最大の火格子面積を持ち、5.0平方メートルに拡大されました。しかし、ボイラーの水量は比較的少なく、過熱器の容量が限られていたため、重量や蒸気の消費量が増える傾向にありました。このため、蒸気の温度は330度に制限され、燃焼効率は課題となりました。

運用の歴史

IVh型は1918年から1920年にかけて納入され、その後オッフェンブルクに配置されました。主に貨物列車の牽引に使用され、平坦な路線条件下でその能力を発揮しました。しかし、ドイツ国鉄に統合された後、複雑な構造が原因で運用の難しさが問題視されるようになりました。1930年代末には、制式機関車の置き換えが進む中、IVh型の一部は北部ドイツの平坦路線で運用を続けました。

戦後の状況

第二次世界大戦後、IVh型は再評価され、試験目的での運用が再開されました。1951年にはドイツ連邦鉄道の試験機関車として、特急編成の牽引に成功しました。この際、967 kmを一度の給水で走りきる無給水走行記録を更新しました。さらに、1969年まで運用され、その能力を示し続けました。2両は保存され、現在は歴史的遺産として訪問者に公開されています。

結論

バーデン大公国邦有鉄道IVh型蒸気機関車は、その革新的な設計と高い性能により、当時の鉄道技術に重要な影響を与えました。運用から長い歳月が経過したにも関わらず、鉄道ファンからの評価も今なお高く、ドイツ鉄道の歴史の中で記憶され続けています。

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