バーミンガム・スーパープリ

バーミンガム・スーパープリ：イギリス唯一の合法公道レース

1986年から1990年にかけて、イギリスの第二の都市バーミンガムで、スリリングなストリート・サーキットレース「バーミンガム・スーパープリ」が開催されました。このイベントは、イギリスにおいて類を見ない、合法的に公道を封鎖して行われたモーターレースとして、モータースポーツ史にその名を刻んでいます。

夢の実現：公道レース開催への道のり

バーミンガムで自動車レースを開催するという構想は、1966年まで遡ります。市議会議員ピーター・バーウェルと実業家でレーシングドライバーのマーティン・ホーンの熱意によって、長年にわたる議論と努力が続けられました。当時のイギリスでは、多くのサーキットが存在したものの、公道レースは一般的ではありませんでした。フランスや北欧諸国では見られた光景が、イギリスでは実現していなかったのです。

多くの反対意見を乗り越え、スターリング・モスの協力も得て、1972年に市議会からようやく開催許可が下り、実現に向けて動き始めました。1976年には、パトリック・ネーヴによるデモンストレーション走行が行われるなど、着実に準備が進められました。

1984年、バーミンガムロードレース法案が議会で承認されたことで、バーミンガム・スーパープリ開催への道は大きく開かれました。こうして、イギリス唯一の合法公道レースとして、このイベントは実現することとなったのです。

バーミンガムの街を舞台に：コースレイアウトとレース

バーミンガム市中心部の一般道路を封鎖して造られた約4キロのコースは、多くのサーキットとは異なる左回り（逆回り）で、独特のレイアウトが特徴でした。スタート・フィニッシュラインはA38道路（ブリストル・ストリート）、ピットエリアはブリストル・ストリート・モーターズ・フォード・ディーラーの前庭に設けられました。

コースは、高速ストレートやテクニカルなコーナー、ヘアピンカーブなどが複雑に織りなされ、ドライバーの高い技術と度胸が試される、まさにスリリングなコースでした。ハルフォードコーナー、Dynaglazeコーナー、キャヴェンディッシュファイナンスコーナーなど、個性的な名前のコーナーが、レースをさらに盛り上げました。

メインレースはFIA国際F3000選手権で、サポートレースとしてイギリスツーリングカー選手権(BTCC)、サンダースポーツレース、フォーミュラ・フォードなども開催されました。多くの名ドライバーが参加し、激しい戦いを繰り広げました。

栄光と苦悩：レースの裏側

しかし、バーミンガム・スーパープリは、順風満帆だったわけではありません。1986年の初年度はハリケーンの影響でレースが中断されたり、1988年には、デヴィッド・ハントのクラッシュによるコース修復作業でBTCCレースがキャンセルされるなど、アクシデントに見舞われることもありました。これらのアクシデント、そして時間制限などの運営上の課題により、バーミンガム・スーパープリは5年で幕を閉じました。

それでも、このイベントは、多くの観客を魅了し、イギリスモータースポーツの歴史に大きな足跡を残しました。F1誘致を目指した取り組みや、ナイジェル・マンセルなどのF1ドライバーの参加も記憶に残る要素です。

レガシー：現代への呼びかけ

2018年には、レッドブル.comが「現代に復活してほしいモータースポーツレガシー ベスト7」のトップにバーミンガム・スーパープリを選出しました。このイベントが、現代においても、多くのモータースポーツファンに忘れられず、再び開催されることを望む声が存在することを示しています。

バーミンガム・スーパープリは、その短い歴史の中で、イギリスモータースポーツに大きな影響を与えました。公道レースの成功例、そしてF1誘致への挑戦、数々のドラマは、今もなお人々の心に刻まれています。

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