バーラム (競走馬)

バーラム：イギリス競馬史に輝く無敗の三冠馬

バーラム（1932年4月13日 - 1956年1月）は、イギリス競馬史にその名を刻む伝説的名馬です。1935年、アイシングラス以来となる快挙、無敗でのイギリスクラシック三冠を達成しました。その輝かしい功績だけでなく、現代競馬に大きな影響を与えた血統的価値も併せ持つ、まさに歴史的名馬と言えるでしょう。

弱冠の才能と華麗なるデビュー

バーラムは、幼少期は病弱で、風邪から肺炎を患うほど体格が弱く、集中力にも欠けていました。調教においてもやる気のない態度が目立ち、将来を嘱望できる要素は、16.2ハンドという恵まれた馬体くらいでした。オーナーであるアーガー・ハーン3世は、この馬にサセックスの海難事故で亡くなったイラン王族の名を冠し、「バーラム」と命名しました。

調教ではなかなか本来の力を発揮できず、フランク・バタース調教師は、レースに出走させながら仕上げるという異例の戦略に出ました。いわば「レースが調教」という手法です。すると、バーラムは予想外の才能を開花させます。21倍という低評価で臨んだナショナルブリーダーズプロデュースステークスでは、後に日本に輸入され種牡馬として成功を収めたセフトを破り、見事優勝。この年はさらにジムクラックステークス、ミドルパークステークスなどを制し、5戦無敗という輝かしい成績でシーズンを終えました。

イギリスクラシック三冠達成への軌跡

翌1935年、バーラムは体調を崩しながらも2000ギニーに挑み、セフトを1馬身半差で退けて見事勝利。続くエプソムダービーでも圧倒的な強さで2馬身差をつけて優勝し、二冠を達成しました。さらにセントジェームズパレスステークスも制し、三冠制覇へ向けて絶好調を維持していました。しかし、秋のセントレジャーステークスに向けた調整中にインフルエンザが流行し、体調を崩してしまいます。それでも、8頭立てという少ない出走頭数の中、大観衆の期待を背負い、セントレジャーステークスに臨みました。そして、5馬身差という圧勝劇で、史上14頭目となるイギリスクラシック三冠を達成。無敗での三冠達成は、史上3頭目の偉業でした。このレースを最後に、バーラムは引退し、種牡馬となりました。

種牡馬として、そしてその生涯の幕切れ

種牡馬となったバーラムは、ビッグゲーム、ターカンなど優秀な産駒を輩出しましたが、当初の期待には届かず、第二次世界大戦の影響もあり、アメリカ合衆国へ輸出されました。しかし、アメリカでは不振に終わり、その後アルゼンチンに輸出され、1956年にその生涯を終えました。

バーラムの血統とその後

バーラムの兄であるDasturは愛ダービー馬であり、3代母Consertinaの子にはプラッキーリエージュがいるなど、その牝系は繁栄を続けました。バーラムの血統は、父ブランドフォードの系統を21世紀まで繋いだモンズーンへと受け継がれ、現代競馬にも大きな影響を与え続けています。

バーラムは、その華麗なる競走成績だけでなく、現代競馬にまで続く血統的価値、そして波乱に満ちた生涯を通して、競馬史に燦然と輝く不滅の名馬として記憶されています。その生涯は、才能、努力、そして運命の残酷さを物語る、感動と興奮に満ちたドラマと言えるでしょう。

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