バール (工具)

バール（鉄梃）とは

バール、または鉄梃（かなてこ）は、主に鉄で作られた棒状の工具で、てこの原理を利用して物を動かしたり、こじ開けたりするのに使われます。L字型で釘を抜く機能を持つものは「釘抜き」とも呼ばれます。また、「プライバー」とも呼ばれることもあります。

釘抜きとしてのバール

釘抜きには、てこの原理を利用する棒状のバールと、「やっとこ」と呼ばれるペンチのような形状の2つのタイプがあります。

日本の釘抜き

江戸時代までは、断面が四角い「和釘」が使われており、この釘は「えんま」というやっとこに似た道具で、頭部を挟んでねじりながら抜いていました。「えんま」という名前は、閻魔様が嘘つきの舌を抜く道具に似ていることからきています。明治時代になり、断面が丸い「洋釘」が使われるようになると、従来の「えんま」に代わって西洋から入ってきた「バール」が使われるようになりました。

バールの形状

バールの先端は、狭い場所に差し込みやすいように平たい形状をしています。先端の一部が90度に曲がっているものが多く、この曲がった部分を支点にして、てこの原理を使いやすくしています。先端には釘の頭を引っ掛けるための切り込みがあり、釘抜きとして使用されることも多いです。

小型のバールは片手で扱えますが、大型のものは釘抜きよりも、てことしての利用が主になります。大工は大型のバールを「大バール」と呼び、区別することがあります。大バールには90度に曲がっていないものもあります。

バールの種類

平バール

短い先端がV字に割れており、釘を抜くのに適しています。V字の溝は釘の頭を捉えるだけでなく、釘の軸に食い込む構造になっています。長い柄の先端は薄く平らで、木材の隙間に差し込みやすくなっています。この先端に釘抜き用のV字溝が付いたタイプを「平バールの尾割れタイプ」と呼びます。

カジヤ（鍛冶屋）

L字の両端が釘抜きになっており、釘抜き機能に特化したタイプです。ヘッド部分がハンマーとしても使えるようになっています。

三徳釘〆

長手端部がポンチ形状になっており、釘の頭を完全に沈めるのに使います。釘締め、小型ハンマー、釘抜きとして使用できる多機能工具です。

バールの用途

釘抜きは、ネイルハンマーというヘッド部に打撃面と釘抜きを備えたハンマーにも付いています。ハンマーは一方向の打撃に特化しているのに対し、バールは打撃、引っ張り、こじ開け、釘抜き、解体など、多様な用途で使用できます。特に、建設重機が入れない狭い場所での解体作業には、人力で扱えるバールが便利です。

長さが1mを超える大型のバールは、釘抜き作業にはあまり適していません。主に土木工事で、重量物の移動や剥離、穴を掘る作業などに使われます。ただし、鉄道バールはレールを固定する犬釘を抜くために、釘抜き機能が付いています。

法令による規制

日本では、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律により、以下の条件を満たすバールは「指定侵入工具」と定義され、正当な理由なく隠して携帯することが禁止されています。

先端部の幅が2cm以上
長さが24cm以上

この規定に違反した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。

主なメーカー

小山刃物製作所（ヒラタ印・モクバ印）
土牛産業株式会社
バクマ工業株式会社
モトコマ株式会社（MKK）

参考資料

『DIY道具の便利帳』株式会社大泉書店
『DIY工具選びと使い方』株式会社ナツメ社

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