バール連盟

バール連盟：ポーランド初の独立蜂起か？

バール連盟（1768年 - 1772年）は、ポーランド貴族（シュラフタ）がポドレ地方の要塞都市バールで結成した連盟です。その目的は、ロシア帝国の侵略と、ポーランド・リトアニア共和国のマグナート（富裕貴族）の権力制限を試みる国王スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキの改革、双方に対する政治的な自由と独立を守ることでした。

連盟結成の背景

1767年から1768年にかけてのセイム（議会）において、ロシア軍が議場を包囲し、ポーランド・リトアニア共和国を事実上の属国としました。さらに、1768年基本法を制定させ、中央政府の権限を一部存続させる一方で、共和国内の非カトリック教徒の権利を引き上げることを認めさせました。このロシアの横暴に対し、キエフ司教ユゼフ・アンジェイ・ザウスキ、クラクフ司教カイェタン・ソウティク、ヘトマンのヴァツワフ・ジェヴスキとその息子セヴェリンらが逮捕され、ロシアに連行されました。共和国の独立侵害、中央政府（王権）の強化、そして宗教的寛容は、保守派や王権強化に批判的な改革者を憤慨させ、カミェニェツ＝ポドルスキ司教アダム・クラシンスキ、カジミェシュ・プワスキ、ミハウ・クラシンスキらが中心となり、政府の政策に抵抗するための合法的軍事組織である連盟を結成するに至りました。

連盟の活動と終焉

国王スタニスワフ・アウグスト・ポニャトフスキは当初、連盟とロシアの調停を図りましたが、不可能と判断すると、王冠領大ヘトマンのフランチシェク・クサヴェリ・ブラニツキ率いる軍を派遣してバールを占拠させました。しかし、同時期にウクライナで発生したコサックの反乱が貴族たちの怒りを刺激し、連盟への参加者を増大させました。ポーランド東南部やリトアニアからも参加者が集まり、連盟は諸外国に支援を求め、敵国ロシアにオスマン帝国が宣戦布告するよう働きかけました（露土戦争）。

イグナツィ・マルチェフスキ、ミハウ・ヤン・パツ、カロル・ラジヴィウ公らの率いる連盟軍は各地でロシア軍に勝利し、国王を無視してヨーロッパの主権国家に使節を派遣するほどになりました。1770年には、連盟評議会が拠点をシロンスクからハンガリーのプレショフに移し、フランス、オーストリア、トルコとの交渉を通じて対ロシア軍事同盟を結ぼうとしました。同年10月22日、評議会は国王の廃位を宣言。ヴェルサイユ宮廷はシャルル・フランソワ・デュムーリエを派遣し、連盟軍の強化に貢献させました。国王自身も一時連盟への参加を考えましたが、1771年にワルシャワで連盟関係者と思われる一味に拉致・誘拐される事件が発生し、以後はロシア側につきました。この事件は、ヨーロッパ諸国における連盟の評価を大きく低下させました。

デュムーリエによって強化された連盟軍でしたが、その戦闘力は長くは続かず、1772年までに主要な抵抗は終息しました。連盟が占拠していたクラクフのヴァヴェル城、ティニェツの要塞、チェンストホヴァなどが次々と陥落し、最後の拠点であったザグシュの修道院も11月28日に落城しました。連盟の参加者たちは、家族とともに囚人としてロシアに連行され、最初の「スィビラク」（シベリア送りのポーランド人）となりました。ロシアはポーランド・リトアニア共和国内に強制収容所を設け、囚人たちをシベリアへ移送しました。

連盟の評価と影響

一部の歴史家は、バール連盟の闘争をポーランド史上初の独立のための蜂起と位置づけています。外国軍の援助を得て戦うことが裏切り行為と見なされていた時代に、連盟は母国への忠誠を誓い続けました。1770年のロシア軍による共和国への侵攻、そして1773年の第一次ポーランド分割は、連盟の参加者たちを愛国的な英雄として美化しました。このイメージは、その後のポーランド独立運動の原動力となりました。

一方で、連盟の評価は分かれており、その軍事行動が第一次分割の直接的な原因であるとする研究者もいれば、ポーランドの独立回復を目指した最初の本格的な国民軍と評価する研究者もいます。

参考文献

Aleksander Kraushar, Książę Repnin i Polska w pierwszem czteroleciu panowania Stanisława Augusta (1764-1768)
F. A. Thesby de Belcour, The Confederates of Bar (in Polish) (Cracow, 1895)
Charles Francois Dumouriez, Mémoires et correspondance (Paris, 1834).
Radom i Bar 1767-1768: dziennik wojennych działań jenerał-majora Piotra Kreczetnikowa w Polsce w r. 1767 i 1768 korpusem dowodzącego i jego wojenno-polityczną korespondencyą z księciem Mikołajem Repninem Poznań 1874

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