ヘトマン

ヘトマン

ヘトマン（ポーランド語：hetman、ウクライナ語：гетьман、チェコ語：hejtman、リトアニア語：etmonas）は、15世紀から18世紀にかけて、ポーランド王国、ウクライナ、リトアニア大公国、およびポーランド・リトアニア共和国において、国王に次ぐ地位にあった軍司令官職の呼称です。17世紀後半にウクライナが独立した際にも、その国家の元首の称号として継承されました。

語源

「ヘトマン」という語は、古高ドイツ語の「ハウプトマン」（Hauptmann）に由来すると考えられています。Hauptは「頭」、mannは「人」を意味し、ハウプトマンは中世においては一般的な軍事称号として「首領」を意味していました。現代ドイツ語では陸軍・空軍の大尉を意味します。
ポーランドとプロイセンは長年にわたり交流があり、軍事・行政用語に相互の影響が見られます。ただし、「ヘトマン」はおそらくチェコ語を経由して伝わったと考えられています。

ポーランド王国、および共和国

ポーランド王国では、1505年に最初のヘトマン職が創設されました。ヘトマンはポーランド軍の指揮権を与えられ、1581年までに戦時における非常職となりました。その後、ヘトマンはポーランド・リトアニア共和国の称号体系に組み込まれ、常設の職となります。ポーランドとリトアニアにはそれぞれ大ヘトマンと野戦ヘトマンが置かれ、常に3～4人のヘトマンが存在していました。王冠領大ヘトマンはポーランド王国の首相である大法官を兼任し、事実上共和国全体の首相としての役割も担いました。

1585年以降、ヘトマン職は反逆行為がない限り終身の職となり、国王に次ぐ統帥権を握る存在となりました。ヤン・カロル・ホトキェヴィチのように、死の床にありながら文書で軍を指揮する事例もありました。国王による廃止ができない状況は、ヘトマンが国王から分立する傾向を生み、独自に政策を推進することも頻繁にありました。有能なヘトマンが大法官を兼任し、議会の代表者であった場合は有効な体制を築けましたが、ヘトマンと国会の関係が逆転し、国会の機能が低下した場合には悲劇的な結果を招きました。ヘトマン（行政権）とセイム（立法権）は相互に抑制し合う関係にありましたが、どちらかの力が弱まると、ヘトマンが政治的に暴走し、国家の利益を損なうこともありました。

近隣諸国と比較すると、共和国のヘトマン職は、立憲君主主義を基盤とし、議会を代表することが期待される異色の存在でした。1776年の行政改革により、ヘトマンの権力は大幅に制限され、行政権の多くは内閣総理大臣の職に移譲されました。1791年の5月3日憲法では、このことが明確に規定され、リベルム・ヴェト（自由拒否権）に代わって多数決の原則が導入され、議会でも政党政治が認められるようになりました。

しかし、近代的に整備されたヘトマン職は、1795年の第3次ポーランド分割と同時に廃止されました。周辺国がポーランドの民主主義改革を危険視し、「反革命」介入を行った結果、ポーランド王国およびポーランド・リトアニア共和国が機能を停止したためです。

ウクライナ

16世紀末頃、ザポロージャ・シーチのコサックの首領は「キーシュのオタマーン」または「ヘーチマン」と呼ばれていました。1572年には、ヘーチマンはポーランド・リトアニア共和国の登録コサック軍の司令官となりました。

1648年のフメリニツキーの反乱以降、ヘーチマンは全ウクライナの首長、つまりヘーチマン国家の統治者を意味するようになりました。選挙で選出されたにもかかわらず、ウクライナのヘーチマンはコサック国家の長として強大な権力を振るい、最高軍司令官であると同時に最高立法権者でもありました。

1667年、アンドルソヴォ条約によりウクライナがドニエプル川に沿って分割されると、コサックは右岸コサックと左岸コサックに分かれました。ロシア帝国領の左岸では、コサック・ヘーチマン職は1764年にエカチェリーナ2世によって廃止されました。最後の「ザポロージャ軍のヘーチマン」は、クィルィーロ・ロズモーウシクィイでした。

ヘーチマンの称号は、ウクライナ革命期の1917年から1920年の間に復活しました。1918年初頭、保守的な親独派勢力がウクライナ人民共和国政府を転覆し、「全ウクライナのヘーチマン」を称するパウロー・スコロパードシクィイ将軍を国家元首とする君主制国家を樹立しました。しかし、このウクライナ国は同年末にはウクライナ人民共和国の新しい指導部によって滅ぼされました。

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