パイド・パイパー・ハウス

パイド・パイパー・ハウス (Pied Piper House)

パイド・パイパー・ハウスは東京都港区南青山に位置し、1975年11月から1989年6月まで営業していた輸入レコード店です。当店は「骨董通り」という通り沿いにあり、音楽と共に過ごす空間を提供することを目指して設立されました。特にレコード好きやミュージシャンにとって、憩いの場となった存在でした。

設立と初期の運営

この店舗は、岩永正敏や小林健らによって新たな音楽体験を提供するというビジョンのもと、1975年に創業されました。有限会社パイド・パイパー・ハウスが設立され、改装された木造モルタルの建物が店舗として利用されました。看板のデザインや紙袋のイラストは鈴木康司によって手がけられ、店内には喫茶コーナーが設けられていました。

来店者の中には多くの音楽関係者やミュージシャンがおり、彼らが交流する場としても機能していました。1976年には新たなスタッフとして長門三恵子が加わり、その後1977年には彼女の夫の長門芳郎もスタッフに参加しました。岩永の不調や他の事業への注力により、長門が店長となり、お店の方向性を定めていくことになりました。

繁栄と文化的な影響

1981年、著名な作家田中康夫の小説『なんとなくクリスタル』に登場したことで多くの新規顧客が訪れ、一時的なブームが生じています。また、1983年には村上春樹の短編小説「雨やどり」にも名前が登場し、当店の存在感をさらに高めました。

1980年代に入ると、タワーレコードや他の競合店舗の増加に伴い、パイド・パイパー・ハウスは特化した品揃えを進め、ウェストコースト・ロックやAOR、オールディーズに強い店舗として知られるようになりました。岩永が関わる海外アーティストの公演にも引き続き参加し、ドクター・ジョンの初来日なども実現させました。

特に小西康陽が関わるピチカート・ファイヴのプロモーションも手がけるなど、日本の音楽シーンにも影響を与えました。

閉店とその後

しかし、1989年春には激しい競争から閉店を決意。6月29日に在庫一掃セールを行い、営業を終了しました。6月には関係者による「フェアウェル・パーティ」が六本木で開催され、惜しまれつつの終幕を迎えました。

2016年にはタワーレコード渋谷店内に「PIED PIPER HOUSE in TOWER RECORDS SHIBUYA」として短期間復活し、多くのファンに再び愛される存在となりました。オープン当初の予定を超え、好評のため延長営業が続けられました。

かつての店舗があった場所は1993年にオフィスビルが竣工され、その足跡は今もなお音楽ファンの間で語り継がれています。

関連作品

長門芳郎が監修した『バイド・パイパー・デイズ』シリーズは、このお店のCD再発企画として、多くのファンに支持されています。

参考資料

• - 岩永正敏著『輸入レコード商売往来』
• - 長門芳郎著『PIED PIPER DAYS パイドパイパー・デイズ 私的音楽回想録1972-198』

音楽と共に歩んだひとつの空間、パイド・パイパー・ハウスの歴史は、多くの人々にとって忘れがたい思い出と共に今も生き続けています。

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