パイパー PA-46

パイパー PA-46（マリブ）

パイパー PA-46（Piper PA-46）は、パイパー・エアクラフト社が製造した軽飛行機シリーズで、その愛称は「マリブ」です。この機体は、与圧キャビンを備えた単発ピストンエンジン機として1982年に発表され、乗客に快適な飛行を提供することを目的として開発されました。

概要

1982年末、パイパー社は新たな試みとして与圧キャビンを備えたピストンエンジンの単発機を発表しました。この機体は、軽レシプロ与圧双発機の性能を単発で実現したもので、その意欲的な設計が光ります。当時、軽レシプロ与圧双発機の生産は減少傾向にあり、PA-46の登場は市場に新たな道を切り開きました。

与圧キャビンを持つ単発機のアイデア自体は、1960年代から存在していましたが、当初は取り扱いに困難が伴いました。特に、過給圧の制御が難しかったため、運航に注意が必要でした。しかし、1960年代後半になると、ターボチャージャーやウエイストゲートの技術が発展し、これらの問題が解決されていきました。

PA-46-310P マリブは、これまでの与圧ピストン単発機とは異なり、以下の2つの特筆すべき点を備えています。

幅広の胴体

パイパー社は、これまでのピストン単発機の枠を超えた設計を採用し、幅広の胴体を採用しました。これにより、2クラス上のピストン双発機のような広々としたキャビンを実現し、通常より多くの乗客を快適に乗せることが可能となりました。この機体には、一名のパイロットと最大五名の乗客が乗ることができます。

グライダーのような翼

PA-46は高アスペクト比の薄い翼を持ち、高空性能を向上させています。これにより、単発機でありながら高高度の航行が実現し、ビーチクラフトなどの与圧双発機に匹敵する性能を備えています。

この設計により、PA-46は25,000フィートでの巡航速度約250ノットを達成し、ピストン単発機の免許で飛行が可能となりました。

試作機は1979年11月30日に初飛行し、1983年には正式な型式証明を取得しました。その年の12月には初めての機体の引き渡しが行われ、多くの顧客から関心を寄せられました。その後、マリブはエンジンや仕様の変更を経て、複数の派生型展開を果たしています。

派生型

• - PA-46-310P マリブ: 最初の量産型で、テレダイン・コンチネンタル製のエンジン（310 hp）を搭載し、404機が生産。
• - PA-46-350P マリブ・ミラージュ/M350: テキストロン・ライカミング製のエンジン（350 hp）を搭載し、現在も生産中。
• - PA-46-500TP マリブ・メリディアン/M500: ターボプロップエンジン（500 hp）を搭載し、現在も生産中。
• - PA-46-350T マトリックス: マリブ・ミラージュから与圧キャビンを省いた非与圧型。
• - M600: M500と同じエンジンで出力向上と燃料容量の増加を図ったモデル。

特徴

パイパー PA-46は、キャビンの広さ、高高度性能、快適なフライトのためのデザインで他機種との差別化が図られています。たとえば、PA-46-350Pの要目は以下の通りです。

• - 全長: 8.81 m
• - 全幅: 13.11 m
• - 全高: 3.44 m
• - 翼面積: 16.26 m²
• - 全備空虚重量: 1,416 kg
• - 最大離陸重量: 1,968 kg
• - エンジン: テキストロン・ライカミング製 TIO-540-AE2A（350 hp）×1
• - 最大水平速度: 407 km/h
• - 証明認定高度: 7,620 m
• - 航続距離: 1,953 km（最大燃料搭載時）
• - 乗客定員: 最大5名
• - 乗員: 1名

このように、PA-46シリーズは快適な乗り心地と高い性能を兼ね備えた飛行機として、ビジネスやプライベートのニーズに応えています。また、マリブは選択肢の多さから、様々な運航条件にも適応できる柔軟性を持っています。

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