パイピング現象

パイピング現象とは

パイピング現象は、地盤中の水の流れによって地盤や構造物が破壊される現象です。特にシルトや砂質の地盤で発生しやすく、浸透水が集中することで、地盤内にパイプ状の水の通り道ができます。

パイピング現象のメカニズム

地盤内の脆弱な部分に浸透水が集中すると、水の通り道が形成されます。このパイプの前後で水位差が生じ、動水勾配が大きくなると、土中の浸透性が高まります。その結果、水とともに土砂が流出し、地盤外へ移動します。動水勾配がさらに増加すると、土砂が噴出するような激しい状態になることもあります。

パイピング現象による被害

パイピング現象は、大型の構造物や建築物の崩壊を引き起こすことがあります。有名な例として、アメリカのティートンダムの崩壊があります。また、堤防やダム、地中壁など、大量の水に接する土木工事の現場では、構造物の内外の水位差や土質の状況を常に監視し、パイピング現象の発生を未然に防ぐ対策が不可欠です。

日本におけるパイピング現象の事例

日本でも、豪雨などの自然災害時にパイピング現象が発生し、堤防の決壊などを引き起こしています。

平成24年7月九州北部豪雨: 福岡県矢部川の堤防下でパイピング現象が発生し、堤防が沈み込み決壊に至りました。
平成27年9月関東・東北豪雨: 鬼怒川の堤防下でパイピング現象が発生し、堤防決壊の要因の一つと見られています。
平成30年7月豪雨: 島根県江の川で堤防下にパイピングが発生しました。災害後、金属製の遮水板を設置する工事が進められ、対策が施されました。

パイピング現象への対策

パイピング現象を防ぐためには、以下の対策が重要です。

構造物の内外の水位差を減らす: 適切な排水設備の設置や、地下水面の低下対策を行います。
地盤の透水性を抑制する: 遮水壁の設置や、地盤改良などにより、水の浸透を防ぎます。
動水勾配を小さくする: 堤防の断面を大きくしたり、排水層を設けることで、水の流れを緩やかにします。

まとめ

パイピング現象は、地盤や構造物の安全性を脅かす重大な現象です。適切な対策を講じることで、被害を未然に防ぐことが可能です。日頃からの地盤調査や水位の監視、適切な設計・施工が重要となります。

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