パイミオ・チェア

パイミオチェア（Paimio chair）は、フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アールトとその妻アイノによって設計された名作椅子です。アームチェア41 パイミオとも呼ばれ、単にパイミオと略されることもあります。

設計の背景と概要

この椅子は、1930年から1931年にかけて、フィンランドのパイミオにあるサナトリウムのためにデザインされました。パイミオという名前は、このサナトリウムが位置する町の名前に由来しています。1932年に製品化され、その美しいデザインと快適な座り心地から、世界中で愛されるようになりました。

椅子のサイズは、高さ64センチメートル、幅60センチメートル、奥行き80センチメートルです。この椅子が初めて一般に公開されたのは、1932年にヘルシンキで開催された北欧建築フォーラムの展示会でした。その後、アールト夫妻が設立した家具会社アルテック社の主要な製品となり、アールトはインテリアデザイナーとしての名声を確立しました。

製作技術

パイミオチェアは、マルセル・ブロイヤーが1927年から1928年にかけて設計した鋼管製の椅子、ワシリーチェアに影響を受けて制作されました。アールトは、ワシリーチェアのデザインに触発され、新しい素材と技術を用いた椅子のデザインに挑戦しました。

この椅子の最大の特徴は、「ラメラ曲げ木」と呼ばれる技術を用いて製作されている点です。この技術は、数ミリメートルの厚さにスライスされたラメラ（フィンランド産のバーチ材の薄板）を、木目が同じ方向を向くように重ね合わせ、積層合板として曲げることで、必要な曲面を作り出すものです。椅子の座面と背もたれは、一枚の積層合板で構成されており、その一体感がデザインの美しさを際立たせています。

デザインの特徴

パイミオチェアのデザインは、その有機的なフォルムと、木材の温かみが感じられる点が特徴です。特に、ラメラ曲げ木によって作られた曲線は、座る人に安らぎと快適さを提供します。そのデザインは、機能性と美しさが見事に融合しており、時代を超えて愛される理由となっています。

パイミオチェアは、単なる椅子としてだけでなく、芸術作品としても評価されています。そのデザインは、アールトの建築思想を反映しており、自然との調和、人間工学に基づいた快適性、そして素材の持つ美しさを追求しています。

まとめ

パイミオチェアは、アールトのデザイン哲学と高度な製作技術が融合した、20世紀を代表する椅子の一つです。その美しい曲線、快適な座り心地、そして機能性は、今もなお多くの人々に愛され続けています。この椅子は、アルテック社を通じて世界中で販売され、アールトのインテリアデザイナーとしての地位を不動のものとしました。

参考文献

• - 和田菜穂子（編）『アルヴァ・アアルト もうひとつの自然』国書刊行会、2018年10月。ISBN 978-4-336-06289-5。

関連文献

• - 吉村祐樹, 小泉隆「アルヴァ・アアルトの曲げ木によるキャンチレバーチェア及びパイミオチェアの造形特徴」『デザイン研究』第67巻第4号、一般社団法人 日本デザイン学会、2021年3月、17-24頁、2022年7月3日閲覧。

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