パウルス・ヘクトル・マイアー

パウルス・ヘクトル・マイアーの生涯と業績

パウルス・ヘクトル・マイアー（1517年 - 1579年）は、ドイツのアウクスブルク市でさまざまな公職を歴任した人物であり、特に剣術に関する業績で知られています。彼は1541年から市の会計方を、1545年からは食糧方も務め、行政の一翼を担いましたが、彼の人生は単なる官職に留まらず、武術と文化の発展にも寄与しました。

収集家としての活動

マイアーは、古い武器や武術書（Fechtbuch）の蒐集に情熱を注ぎました。特に目を引くのは、1554年のイェルク・ヴィルハルムの手稿や、1556年に購入した『ヴァラーシュタイン写本』です。彼は従来の教本にとらわれず、剣術における「教えの精髄」を目指し、別のアプローチでまとめることを決意しました。

そのために、二人の熟練した剣術家を雇い、マイアー自身が知識として持つすべての技法を検証し、完璧な形で描写する作業に取り組みました。このプロジェクトには、画家のイェルク・ブロイ（子）が参加しました。彼は1543年以降アウクスブルクに滞在していたことが確認されています。この一連の作業は時間と費用がかかり、マイアーはそのために自身の資産をほとんど使い果たしたと言われています。その結果、大鎌や斧などを使った新たな技法が記録に残ることとなりました。

私生活と横領事件

アウクスブルクの名士として知られたマイアーは、蒐集活動に加え、豪華な祝賀会や歓迎パーティーを開催することでも著名でした。しかし、彼の豊かな生活を支えるためには十分な収入がなく、市の金庫から資金を横領することに至りました。具体的には、1541年から長年にわたり、監督として任されていた市の金庫から資金を不正に流用し続けたのです。

その後、1579年、会計簿の精査を行った補佐方と衝突し、横領が発覚することになりました。62歳を迎えたマイアーは、盗人として絞首刑にされ、彼の名は歴史に刻まれることとなりました。

マイアーの剣術大綱

彼の業績の中心には、剣術に関する大綱の編纂があります。マイアーの大綱は、ラテン語版、ドイツ語版、羅独版の3つが現存しており、それぞれ独立した内容で構成されています。これらはおそらく1542年以降、イェルク・ブロイがアウクスブルクに滞在していた1543/44年までの間に作成されたと考えられています。

特に価値のあるのは、バイエルン州立図書館が所蔵するラテン語版です（cod. icon 393）。これは309葉の構成で、豪華な革装丁が施されています。また、1567年にはバイエルン公アルブレヒト5世によって800グルデンで購入されたことでも知られています。

他にも、オーストリア国立図書館に所蔵される羅独版（Codex Vindobensis 10825/26）や、ザクセン州立図書館が保管するドイツ語版（Mscr. Dresd. C 93/94）が存在します。さらに、彼が1552年にアントン・ラストの記録に基づいて作成した後代の縮小版の写本も残されています。これらの資料は、16世紀の剣術を理解する上で貴重な情報源となっています。

まとめ

パウルス・ヘクトル・マイアーは、剣術の進化に貢献しただけでなく、彼の人生は多くのドラマに満ちていました。公職に従事しながら、武道を通じてその精神を追求し続けた彼の姿勢は、後世に影響を与えることとなり、その業績と倫理的な崩壊は、彼の名を歴史に刻むこととなったのです。

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