パキスタン宇宙高層大気研究委員会

パキスタン宇宙高層大気研究委員会（SUPARCO）

パキスタン宇宙高層大気研究委員会（SUPARCO）は、パキスタン政府の行政機関であり、同国の宇宙計画、航空工学、航空宇宙工学研究を統括する役割を担っています。1961年に設立されて以来、パキスタンの宇宙開発における中心的な存在として活動を続けています。

設立と初期の活動

SUPARCOは、物理学者アブドゥッサラームの進言に基づき、当時の大統領ムハンマド・アイユーブ・ハーンの行政命令によって設立されました。設立当初はパキスタン原子力委員会（PAEC）の一部門として、ロケットの研究と試験飛行を担当しました。1961年6月には、空軍准将ウワディスワフ・ユゼフ・マリアン・トゥロウィチの指導の下、二段ロケット「Rehbar-I」の打ち上げに成功し、パキスタンはアジアで3番目、世界で10番目のロケット打ち上げ国となりました。

組織の変遷と発展

1966年、SUPARCOはPAECから独立し、大統領直属の組織となりました。アブドゥッサラームが初代委員長に就任し、カラチとラホールに宇宙開発の中心拠点を設立しました。その後、ムニール・アーマド・カーンの尽力により、1980年に独立機関として再編され、国家宇宙機関としての地位を確立しました。

1990年には、パキスタン初の国産衛星「Badr-1」が中国の協力により打ち上げられ、イスラム圏初の国産人工衛星として称賛されました。その後も、Badr-Bの開発、Paksat-1、Paksat-1Rといった通信衛星の運用など、様々な宇宙開発プロジェクトに取り組んでいます。

現在の活動

現在、SUPARCOはパキスタン軍の戦略計画本部（SPD）の一部であり、Ahmed Bilal少将が委員長を務めています。リモートセンシング衛星の開発にも力を入れており、将来的には独自の打ち上げロケットによる衛星打ち上げを目指しています。カラチに本部を置き、バロチスタン海岸に飛行試験場を保有しています。

ロケット開発

SUPARCOは、観測ロケット計画として、1960年代に「Rehbar-I」「Rehbar-II」などのロケットを打ち上げ、上層大気の観測を行いました。また、1980年代には、ハトフ弾道弾計画に関与し、ミサイル技術の開発にも携わりました。近年では、シャーパー、ラクナムといった高高度超音速観測ロケットを開発・試験しています。これらのロケット技術は、将来的な衛星打ち上げロケットの開発にも繋がることが期待されています。

衛星開発

SUPARCOは、通信衛星と観測衛星の開発・運用にも力を入れています。通信衛星としては、Paksat-1、Paksat-1Rを運用しており、ブロードバンド、eラーニング、遠隔医療、衛星テレビなどのサービスを提供しています。観測衛星としては、Badr-Bを打ち上げ、パキスタン西部の国境地帯の監視などに利用しています。また、高解像度リモートセンシング衛星システム（PRSS）の開発も進めており、合成開口レーダー衛星と光学衛星の打ち上げを計画しています。

国際協力

SUPARCOは、国際協力にも積極的に取り組んでおり、アメリカ、中国、トルコなど、多くの国々と協力関係を築いています。特に、中国とは、衛星打ち上げや宇宙技術の分野で緊密な協力関係にあります。また、アジア太平洋宇宙協力機構のメンバーとして、地域における宇宙開発の発展にも貢献しています。

今後の展望

ムシャラフ大統領は、SUPARCOの再活性化と構造改革を掲げ、パキスタンが自国で衛星を打ち上げることを目指しています。通信衛星、リモートセンシング衛星、衛星打ち上げロケットの研究開発に力を入れ、天文学、宇宙論、天体科学、天体物理学、宇宙生物学、宇宙化学などの分野での教育、航空宇宙工学、ロケット推進技術、情報通信技術などの分野での社会経済開発も目標としています。

主要な設備

本部: カラチ
プラント: カラチ近郊のHub
* 飛行試験場: バロチスタン海岸沿いのソンミアニ

宇宙科学と天文学

SUPARCOは、カラチ大学の宇宙惑星天体物理学研究所などの研究施設を利用して、天文学教育や観測活動を行っています。

まとめ

SUPARCOは、パキスタンの宇宙開発を担う重要な機関であり、ロケット開発、衛星打ち上げ、宇宙科学研究など、幅広い分野で活動しています。国際協力も積極的に行い、宇宙技術の発展に貢献しています。今後のパキスタンの宇宙開発におけるさらなる発展が期待されます。

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