パシアンス・エスカリエの肖像

パシアンス・エスカリエの肖像

フィンセント・ファン・ゴッホが1888年8月に描いた油彩画『パシアンス・エスカリエの肖像』は、アルル近郊の農夫パシアンス・エスカリエをモデルにした作品です。ゴッホは、この農夫を題材に複数の絵画を制作しており、特に有名なのは構図が異なる2つの肖像画です。

2つの肖像画

1つ目の作品は、青色の壁を背景に、モデルであるパシアンス・エスカリエが腕を下ろした状態で描かれています。この作品は、現在アメリカのパサデナにあるノートン・サイモン美術館に所蔵されています。この絵では、エスカリエの表情や佇まいが、彼の内面を静かに物語っているようです。

2つ目の作品は、オレンジ色の壁を背景に、エスカリエが杖（または鍬）を持っている姿が描かれています。こちらの作品は個人蔵となっており、一般公開はされていません。この作品は、画集や美術名鑑などでは、ギリシャの富豪スタブロス・ニアルコスのコレクションとして紹介されることがあります。しかし、ニアルコス家は現在もこの作品を所蔵しているかどうかは公式に発表していません。

モデル、パシアンス・エスカリエについて

パシアンス・エスカリエは、アルル近郊で農業を営んでいた人物です。ゴッホは、彼の人となりや農夫としての生活に深い関心を抱き、その姿をキャンバスに留めようと試みました。エスカリエの肖像画は、ゴッホが人物の内面を描き出そうとした意欲的な試みであり、彼の芸術的な才能を証明する作品の一つと言えるでしょう。ゴッホは、モデルの内面を捉えようと試み、その結果、それぞれの作品が異なる雰囲気を持つことになりました。

作品の意義

『パシアンス・エスカリエの肖像』は、ゴッホが人物画に込めた情熱と、モデルの内面を深く理解しようとする姿勢を示す重要な作品です。異なる構図で描かれた2つの肖像画は、それぞれが独自の魅力を持ち、ゴッホの多様な表現力を物語っています。これらの作品を通して、ゴッホは単なる農夫の姿だけでなく、その人物の生き様や内面を表現しようとしたことが伺えます。

このように、『パシアンス・エスカリエの肖像』は、ゴッホの芸術における人間への深い関心と、卓越した表現力を示す作品として、美術史において重要な位置を占めています。

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