スタブロス・ニアルコス

スタブロス・ニアルコス：海運王の生涯と遺産

スタブロス・スピロス・ニアルコス（1909年7月3日-1996年4月16日）は、20世紀を代表するギリシャの海運王です。アメリカ人両親のもとアテネに生まれ、アテネ大学法学部卒業後、世界恐慌のさなかに海運事業に乗り出しました。6隻の船から始まった事業は、第二次世界大戦中の損失を乗り越え、着実に拡大していきます。1952年には当時世界最大級のオイルタンカーを所有するまでに成長し、スエズ危機による運賃高騰も追い風となり、巨万の富を築きました。晩年はスイスのサンモリッツで過ごしました。

波乱万丈の私生活

ニアルコスの私生活は、ビジネスの成功とは対照的に波乱に満ちていました。彼は5度の結婚をし、2人の娘と3人の息子をもうけました。最初の妻はヘレン・スポリデス、2人目はメルポメネ・カッパリス、3人目はギリシャの海運王ジョージ・S・リバノスの姉ユージニアです。その後、ヘンリー・フォード2世の娘シャーロットと結婚するも離婚し、再びユージニアと縒りを戻しました。しかし、ユージニアは1970年に、その後結婚した4番目の妻アシーナ・リバノス（アリストテレス・オナシスの元妻）も1974年に、それぞれ薬物過剰摂取で亡くなりました。晩年にはヨルダンのフィリヤル王女やイタリアのマリーア・ガブリエッラ王女とも関係を持っていたと言われています。

息子の活躍とニアルコス家の事業

ニアルコスの長男フィリップ・ニアルコス、次男スピロス・ニアルコスも、それぞれ事業を継承、発展させました。特に、フィリップの長男であるスタブロス・ニアルコス3世は、オルセン姉妹やパリス・ヒルトン、ロシアの大富豪ダーリャ・ジュコワといった著名な人物との関係でも知られています。スピロス・ニアルコスの妻はギネスビール創業者一族の相続人であるダフネ・ギネスでした。現在、ニアルコス家の事業は、息子たちやその子供たちによって引き継がれていますが、その詳細な内容は公表されていません。

世界的な美術コレクション

ニアルコスは、海運事業で得た巨額の富を、美術品収集にも費やしました。そのコレクションは、西洋絵画、特に印象派、後期印象派の作品を中心に、古代ギリシャ美術、中世ヨーロッパの工芸品、そして有名なファベルジェの卵なども含む、世界でも有数の規模を誇ります。ゴッホの「包帯をしてパイプをくわえた自画像」や「パシアンス・エスカリエの肖像」といった名画も所蔵していたとされています。また、ピカソやウォーホルの作品も複数購入しており、その資金力と収集眼から、美術界でも著名なコレクターとして知られていました。現在、これらのコレクションはニアルコス家によって管理されていますが、詳細は公開されていません。

競走馬生産・所有と国際的な功績

ニアルコスは競走馬の生産と所有にも力を注ぎ、アメリカ・ケンタッキー州に牧場を所有していました。ヌレイエフ、ミエスク、キングマンボなど、数々の名馬を所有し、世界の競馬界に大きな影響を与えました。彼の死後、競馬事業は娘のマリア、そして「ニアルコス・ファミリー」名義で引き継がれ、2021年には国際競馬統括機関連盟から国際功労賞を受賞しています。

スタブロス・ニアルコスの遺産

スタブロス・ニアルコスは、海運事業での成功、世界的な美術コレクション、そして競馬界への貢献など、多岐にわたる分野で大きな足跡を残しました。その遺産は、財産だけでなく、大胆な事業展開、そして収集家としての類まれな審美眼という、後世に語り継がれるべきものと言えるでしょう。ニアルコス財団も設立され、その活動は現在も続いています。彼の生涯は、成功と挫折、そして情熱と遺産が複雑に絡み合った、ドラマチックな物語です。

もう一度検索