パスクアル・オロスコ

パスクアル・オロスコ：メキシコ革命を駆け抜けた生涯

パスクアル・オロスコ(1882年1月28日-1915年8月30日)は、20世紀初頭のメキシコを揺るがしたメキシコ革命において、重要な役割を果たした革命家の一人です。成功と挫折、裏切りと逃亡、そして悲劇的な最期…彼の生涯は、激動の時代のうねりをまざまざと映し出しています。

オロスコはチワワ州サン・イシドロ(現在の彼の名を冠した町)で生まれ、農業を営んでいました。その後、ラバを使った貴金属輸送で財を成し、革命運動に資金を提供できるほどの経済力を持つようになりました。

1910年、長年続いたポルフィリオ・ディアス独裁政権への反発が高まり、フランシスコ・マデロが大統領選挙に立候補しますが、逮捕されます。マデロはアメリカへ亡命し、「サン・ルイス・ポトシ綱領」を発布、ディアス政権打倒を呼びかけました。この呼びかけに応え、1910年11月20日、メキシコ革命が勃発します。

オロスコはマデロの革命運動に共鳴し、私財を投じて武器の購入や、反ディアス政権の新聞『チワワ人民の叫び』の発行を支援しました。1911年5月、パンチョ・ビリャと協力し、シウダー・フアレスを制圧。この勝利は、ディアス政権崩壊の直接的な引き金となりました。

しかし、マデロ政権下でのオロスコの扱いは冷ややかでした。マデロは、オロスコのシウダー・フアレス攻略を自身の命令に反するものと捉え、彼にふさわしい地位を与えず、ライバルであるベヌスティアーノ・カランサを重用しました。オロスコはチワワ州の地方軍司令官という、期待外れのポストに甘んじることになります。

マデロ政権は、オロスコが期待した農地改革を実行することができませんでした。各地で反乱が勃発する中、オロスコは「コロラドス(赤旗派)」と呼ばれる反乱軍を組織し、1912年に反マデロの武装蜂起を起こしますが、ビクトリアーノ・ウエルタに鎮圧され、アメリカに亡命します。

1913年、ウエルタがクーデターでマデロ政権を打倒すると、オロスコはメキシコに戻り、ウエルタに接近。少将に任命され、憲法派と戦いました。しかし、カランサやビリャ、サパタらからは裏切り者と糾弾されます。

ウエルタ政権が崩壊すると、オロスコは再びアメリカに亡命し、ウエルタと共に反政府組織を結成しようとしますが、1915年6月、アメリカの中立法違反で逮捕・拘留されます。保釈後も自宅軟禁下に置かれましたが、7月に逃亡。しかし、メキシコへの再入国を試みた際に、1915年8月30日、テキサス州ヴァン・ホーンでテキサスの民警団に射殺されました。馬泥棒の容疑がかけられましたが、真相は藪の中です。

オロスコの遺体はエル・パソに埋葬され、約3000人が葬儀に参列しました。10年後、遺体はチワワ州チワワに移されました。オロスコの生涯は、メキシコ革命の激動と、理想と現実の狭間で苦悩した一人の革命家の物語として、今もなお人々の記憶に刻まれています。彼の功績と複雑な人物像は、現代においても議論の的となっています。

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