パスタフィラータ

パスタフィラータ：糸を引くチーズの秘密

パスタフィラータ（Pasta filata）とは、イタリアで古くから伝わる独特のチーズ製法です。英語ではstretched-curd cheeseなどと呼ばれ、その名の通り、チーズを糸のように引き伸ばす工程が特徴です。この製法によって作られるチーズは、滑らかで伸びのある、他にない食感を持ちます。

製法工程

パスタフィラータの製造工程は、他のチーズと同様に牛乳から始まります。通常は牛または水牛のミルクを使用します。まず、温めた牛乳に凝乳酵素を加え、凝固させます。約1時間ほど静置した後、できた凝乳（カード）を丁寧に細かく切ります。この後、ホエイ（乳清）を排出します。カードは数時間休ませる場合もあります。

そして、パスタフィラータ製法の核心である「フィラトゥーラ (filatura)」工程に移ります。この工程では、カードを非常に高温（モッツァレラ・ディ・ブーファラ・カンパーニャの場合、95℃にも達します）のホエイまたは熱湯に浸します。数時間かけてゆっくりと加熱することで、カードが柔らかく、伸びのある状態になります。

カードが十分に熱せられると、余分な水分を取り除き、カードを丁寧に混ぜ合わせ、練っていきます。この作業によって、カードが糸のように伸びる、特徴的な弾力のある状態になります。その後、カードの塊を分割し、手で引き延ばしたり、細く裂いたりしながら、目的の形状に成形します。

代表的なパスタフィラータチーズ

モッツァレラチーズは、パスタフィラータ製法で最も有名なチーズです。この製法で作られるモッツァレラは、フレッシュでクリーミーな味わいが特徴で、出来立てを味わうのが理想的です。

しかし、パスタフィラータ製法で作られるチーズはモッツァレラだけではありません。プロヴォローネ、カチョカヴァッロ、スカモルツァなど、様々なチーズがこの製法で作られています。これらのチーズは、モッツァレラとは異なり、熟成工程を経ることで、より複雑で奥深い味わいを獲得します。熟成方法も様々で、ウォッシュ（水洗い）や燻製を行うものもあります。熟成期間の長さや方法によって、風味や食感にバリエーションが生まれます。

パスタフィラータの魅力

パスタフィラータ製法は、チーズに独特の食感と風味を与えるだけでなく、多様なチーズを生み出す可能性を秘めています。フレッシュなモッツァレラから、熟成を経た風味豊かなチーズまで、そのバリエーションは無限大です。イタリアの食文化において、パスタフィラータは重要な役割を担っており、これからも人々に愛され続けるチーズ製法と言えるでしょう。

もう一度検索