パズズ

パズズ：風と熱風の魔神、悪霊を統べる王

パズズは、古代アッカド（現在のイラク周辺）に伝わる、風と熱風を司る強力な悪霊であり、魔神として知られています。その異形な姿と、熱病をもたらす力から、人々から恐れられていましたが、同時に悪霊を統御する存在としても崇められていました。

異形の姿と力

パズズは、ライオンの頭、ライオンの腕、ワシの脚、背中に4枚の鳥の翼、そしてサソリの尾を持つという、非常に特徴的な姿で描かれます。さらに、蛇の男根を持つとされ、その異形さが際立っています。彼は風に乗って熱病を運び、人々に災いをもたらすと信じられていました。特に、乾燥した熱風は農作物に被害を与え、人々の生活を脅かす存在であったため、パズズは恐れられる対象でした。

悪霊を統べる王としての側面

しかし、パズズは単なる悪霊として恐れられるだけでなく、悪霊を統御する王としても認識されていました。そのため、パズズの彫像は、悪霊から身を守るための護符として用いられることがありました。人々は、パズズの力によって他の悪霊を追い払い、災厄から逃れようとしたのです。この点は、パズズ信仰の複雑さを示しています。恐れと同時に、保護を期待する、両価的な感情が入り混じっていたと考えられます。

蝗害の神格化

また、パズズは蝗害を神格化した存在であるという説もあります。蝗害は、古代メソポタミアにおいて深刻な農業被害をもたらす天災であり、人々の生活を脅かすものでした。パズズが風に乗って熱病を運ぶというイメージは、蝗が風に乗って農作物を食い荒らす様子と重なります。そのため、パズズは蝗害を象徴する存在として、恐れられていたと考えられます。

メソポタミアの「風の魔王」

パズズは、「風の魔王」とも呼ばれ、メソポタミアの神話体系において重要な位置を占めています。彼は、人間の身体に獅子の頭とロバの歯を持つ女神ラマシュトゥを妻に持つとされています。ラマシュトゥは、出産時の女性や乳幼児を苦しめる悪霊として知られており、パズズとの夫婦関係は、悪霊の世界における権力構造を示唆しているとも考えられます。

現代への影響

パズズは、古代メソポタミアの信仰体系に深く根ざした存在ですが、現代においても、その名は広く知られています。特に、映画『エクソシスト』に登場する悪魔の名前として用いられたことで、世界的に有名になりました。映画の中では、パズズは憑依を通じて人々に苦しみを与える存在として描かれていますが、これは、古代メソポタミアにおけるパズズのイメージを反映したものです。

まとめ

パズズは、アッカドに伝わる風と熱風の悪霊であり、魔神です。異形な姿と熱病をもたらす力から恐れられる一方で、悪霊を統御する王としても崇められていました。蝗害の神格化という側面も持ち、古代メソポタミアの人々の生活と密接に関わっていました。現代においても、その名は広く知られており、悪魔の象徴として用いられています。パズズは、古代メソポタミアの信仰体系を理解する上で、非常に重要な存在と言えるでしょう。

関連項目

ラマシュトゥ - パズズの妻。出産時の女性や乳幼児を苦しめる悪霊。
アポルオン - パズズと同様に蝗害をもたらす悪魔。
* エクソシスト (映画) - パズズが登場するホラー映画。

もう一度検索