メー

メソポタミア神話における「メー」

メソポタミア神話において、「メー」（シュメール語: me, アッカド語: parşu）とは、神々が有するとされる基本的な社会的慣習、宗教的習慣、技術、行動規範、そして文明を形成する人間の条件といった、根源的な概念を指します。シュメールの人々は、メーが世界の秩序を保ち、人間と神の関係を理解する上で不可欠であると考えていました。

神話的起源

メーは、もともと神エンリルによって集められ、エンキ神の保護のもとに管理されました。その後、エンキ神によって、彼の守護都市であるエリドゥをはじめ、ウル、メルーハ、ディルムンといったシュメール文明の中心都市へと伝えられました。

「エンキと世界の秩序」という詩には、エンキ神が様々な技術や自然現象に対する責任範囲を、下位の神々にどのように分配したかが詳細に記されています。この詩の中でメーは様々な箇所で言及されているものの、その具体的な内容は明確に定義されていません。メーが司る範囲は多岐にわたり、場所によって異なる属性を持つため、神々がそれぞれ持つ責任範囲とは異なる概念であると考えられています。

詩の中で、エンキ神が自身の力を賛美する場面の後、娘であるイナンナ神が現れ、自身の神としての影響力が軽視されていることに不満を述べます。エンキ神は、イナンナ神をなだめるために、彼女が持つ力の重要性を説きました。

また、「イナンナとエンキ：エリドゥからウルクへの文明の術の移転」という文献では、メーをめぐるイナンナ神の不満が再び描かれています。ウルクの守護神であるイナンナ神は、エンキ神が守護するエリドゥからメーを持ち帰ることで、自身の権威を高めようとしました。イナンナ神は、エリドゥにあるエンキ神の神殿エアプスを訪れ、エンキ神が酒に酔ったところでメーを譲るように頼み、エンキ神はそれに応じました。しかし、酔いが醒めたエンキ神は、メーが失われたことに気づき、イナンナ神からメーを取り戻そうと試みます。しかし、結局は失敗し、イナンナ神はメーをウルクに持ち帰ることに成功しました。

メーの形態と多様性

メーがどのような形を取るかは定かではありませんが、物理的な実体を伴うものと考えられています。エアプス神殿の特定の場所に保管されていただけでなく、王冠のように被ったり、衣装のように身につけたり、玉座のように座ったりすることができたとされています。また、イナンナ神が「天上の舟」でウルクに到着した後、メーを人々に示すことができたことからも、具体的な形を持つものであったと推測されます。

メーの中には、楽器のような物理的なものもあれば、「籠編み」のような技術や「勝利」のような抽象的な概念も含まれていました。

メーがどのように保管、管理、公開されていたかは、詩の中で明確には示されていません。また、すべてのメーが善の属性を持っているわけではなく、「英雄であること」や「勝利」と並行して、「都市の破壊」、「うそ」、「憎しみ」といった負の概念も含まれています。シュメールの人々は、このような悪や罪を、人間性の中に内在する、神聖で不可解かつ不可避な運命として受け止めていたと考えられています。

メーの一覧

後代の神話によると、100以上のメーが存在していたとされており、4通りのリストが存在するとされています。以下は、判読可能なメーの一例です。

上位の神である
神である
王冠である

メーは、このように様々な意味や属性を持ち、シュメール人の世界観や価値観を理解する上で重要な概念です。

参考文献

Kramer, Samuel Noah (1963). The Sumerians: their history, culture, and character. Chicago: The University of Chicago Press. ISBN 0-226-45238-7

関連項目

法典
石版

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