パッカードベル

パッカードベル：低価格PC戦略と買収劇の軌跡

パッカードベルは、1933年、アメリカ・ロサンゼルスで創業した電気機器メーカーです。当初は無線機器を製造していましたが、その後テレビやラジオへと事業を拡大しました。1968年にはテレダインに買収され、同社の一部門となりました。

1986年、ベニー・アラジェム率いる投資家グループがテレダインの家電部門を買収し、パッカードベルは独立。1990年代前半からは、低価格PC市場に参入し、積極的な販売戦略で急成長を遂げました。IBMやコンパックといった高級路線のメーカーとは対照的に、低価格路線と店頭販売を組み合わせることで、一時は米国内で市場シェア2位を獲得するまでに至ります。しかし、デルやゲートウェイといったメーカーが低価格PC市場に参入してきたことで、パッカードベルの収益は悪化していきました。

日本市場においても、1994年からデスクトップPCやノートPCの販売を開始します。日本の販売代理店は千葉電子株式会社でした。当時、日本市場ではPC-9800シリーズからPC/AT互換機|PC_AT互換機への移行が課題となっていました。

1995年、NECがパッカードベルに資本参加。その後、1996年にはNECの海外部門と合併し、「パッカードベルNEC」が誕生しました。同時に、日本法人の「パッカードベルNECジャパン」も設立されました。この戦略は、NECにとってPC/AT互換機|PC_AT互換機への対応と海外市場進出の両面において重要な意味を持ちました。しかし、日本市場におけるパッカードベルNECのPC販売は振るわず、NEC本体のPC/AT互換機|PC_AT互換機への移行が進むにつれ、パッカードベルNECの存在意義は薄れていきました。

米国市場においても、パッカードベルのシェアは減少の一途を辿ります。NECからの多額の支援にもかかわらず、業績は改善せず、その状況は社内では「年中行事」と揶揄されるほどでした。

1998年にはNECがパッカードベルを完全子会社化し、事業回復を目指しましたが、日本法人は1999年6月に解散。米国でもeMachinesの低価格PCの登場によって販売は低迷し、NECは同年11月、米国におけるPC事業からの撤退と工場閉鎖を発表。社名を「NECコンピューターズ」に変更しました。

その後、パッカードベルは欧州市場を中心にPC事業を継続しました。2006年、eMachinesの創業者であるラップ・シュン・ヒュイに株式が売却され、NECグループから完全に撤退。現在はデジタルオーディオプレーヤーなどの製造を主な事業としています。

2007年10月、パッカードベルは台湾のエイサーに買収されることが発表され、2008年2月には欧州委員会が買収を承認。長きに渡る歴史に幕を閉じました。パッカードベルのブランドは、低価格PC市場への挑戦と、買収劇という波乱万丈の歴史によって記憶されています。

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