パティ・ボイド

パティ・ボイド：モデル、写真家、そしてミューズ

パティ・ボイド(1944年生まれ)は、イギリスを代表するモデル、写真家として知られています。その生涯は、音楽史に輝く2人の巨星、ジョージ・ハリソンとエリック・クラプトンとのかかわりによって彩られ、多くのファンを魅了してきました。彼女は、ハリソンの「サムシング」や「フォー・ユー・ブルー」、クラプトンの「いとしのレイラ」、「ワンダフル・トゥナイト」、「ベル・ボトム・ブルース」といった名曲のインスピレーションとなった人物としても有名です。

幼少期とモデルとしてのキャリア

サマセット州トーントンで生まれたパティは、パイロットだった父親の仕事の都合で、幼少期をケニアのナイロビで過ごしました。両親の離婚を経てイギリスに戻り、寄宿学校を卒業した後、1962年にロンドンへ移住。そこでファッション雑誌にスカウトされ、モデルとしてのキャリアをスタートさせます。当初は歯並びを指摘されるなど苦労もしましたが、才能と努力で克服。ロンドン、ニューヨーク、パリといったファッションの中心地で活躍し、デヴィッド・ベイリーやテレンス・ドノヴァンといった著名なカメラマンに撮影されました。1964年にはヴォーグ誌のイギリス版とイタリア版の表紙を飾るなど、人気モデルとしての地位を確立します。

ジョージ・ハリソンとの出会いそして結婚

1964年、パティは映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』の撮影を通してジョージ・ハリソンと出会います。当初は他の男性との婚約寸前でしたが、ハリソンの魅力に惹かれ、交際を始めます。1966年、二人は結婚。パティはハリソンの妻として、ビートルズの華やかな世界を間近で見てきました。インドへの旅やマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーとの出会いなど、スピリチュアルな体験を共にした時期もありました。しかし、ハリソンの保守的な考えや宗教への傾倒、そしてパティ自身のモデルとしての活動との間で葛藤が生じ、二人の関係は次第にぎくしゃくしていきます。

ハリソンとの破局とエリック・クラプトンとの関係

パティとハリソンの関係が破綻に向かう中、パティはローリング・ストーンズのロン・ウッドと親密になり、1973年にハリソンと離婚します。そして、クラプトンとの関係が始まります。クラプトンはハリソンの親友でもあり、パティへの強い想いを「いとしのレイラ」などの楽曲に表現しています。しかし、クラプトンとの結婚生活もまた、アルコール依存症や浮気といった問題に直面し、1989年に離婚に至ります。

写真家としての活動と自伝の出版

ハリソンとクラプトンとの日々を写した写真展「Through the Eye of a Muse」を開催。2007年には自伝『ワンダフル・トゥナイト』を出版。この自伝は、ハリソンやクラプトンとの関係はもちろん、ビートルズやローリング・ストーンズといった音楽界の伝説的な人物との交流についても赤裸々に綴られ、大きな話題を呼びました。多くのミュージシャンが自らの不名誉な過去が暴露されることを恐れた一方で、パティは有名ミュージシャンからの高額な名誉毀損訴訟を恐れて、自伝の内容を比較的穏便なものに留めました。しかし、彼女の経験に基づいた率直な記述は、読者に強いインパクトを与えました。ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストで初登場1位を獲得するなど、世界的にも高い評価を得ました。

名曲へのインスピレーション

パティは、ハリソンの「サムシング」やクラプトンの「ワンダフル・トゥナイト」、「ベル・ボトム・ブルース」といった数々の名曲にインスピレーションを与えたとされています。これらの曲は、彼女への想いが込められたラブソングであり、パティの人生と密接に結びついていると言えるでしょう。パティ自身も、これらの曲に複雑な感情を抱いていることを告白しています。

パティ・ボイドの生涯は、モデル、写真家、そしてミューズとしての活躍と、音楽史に残る2人の男性との複雑な関係によって構成されています。彼女の自伝は、華麗さと影を併せ持つ、激動の人生を鮮やかに描き出しています。

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