パディ・ロイ・ベーツ

パディ・ロイ・ベーツ: シーランド公国の創設者

パディ・ロイ・ベーツ（1921年8月29日 - 2012年10月9日）は、イギリス陸軍少佐としての経歴を持ちつつ、独自の国家を築いた人物です。彼はシーランド公国の創設者として広く知られ、自らをロイ・ベーツ公（H.R.H. Prince Roy）と称しました。

幼少期と軍歴

ベーツはロンドンに生まれ、第二次世界大戦中は第8軍に所属し、北アフリカ戦線で従軍しました。モンテ・カッシーノの戦いにも参加し、その後、戦後は陸軍を退役し漁師としての生活を送ります。しかし、彼の人生は放送業界へと大きく舵を切ることになります。

海賊放送業者としての活動

1965年、彼は海上に存在するトーチカ、マンセル要塞の一つである「ノック・ジョン・タワー」を占拠し、海賊放送「ラジオ・エセックス」を設立しました。残っていたアメリカ空軍のラジオビーコンを利用して放送を開始したものの、次第に法律に抵触し、1966年には無線電信法違反で罰金を科され、局名を「ブリティッシュ・ベター・ミュージック・ステーション」へと改名。しかし、資金不足から放送を停止せざるを得ませんでした。

シーランド公国の誕生

放送を停止した後、ベーツは「ラフス・タワー」に移動し、1967年に海洋放送法が施行された際、マンセル要塞からの放送が禁止されることになりました。そのわずか19日後の9月2日、ベーツは「ラフス・タワー」の独立を宣言し、シーランド公国を設立しました。この公国は、公式にはイギリスの海域外に存在することから、イギリス政府の管轄外とされ、彼は独自の国旗や憲法を定めました。

占拠とクーデター

1968年には、海賊放送「ラジオ・キャロライン」のローラン・オライリーらがシーランドを占拠しようと試みましたが、ベーツはこれを撃退しました。また、1978年にはドイツ人投資家アレクサンダー・アッヘンバッハを首相に迎えましたが、彼がクーデターを画策したことで、一時的にシーランドは危機的状況に陥りました。ベーツは、遥か昔の軍のネットワークを駆使し、クーデターを鎮圧しました。アッヘンバッハはシーランドの法律によって処罰され、外交的な対応も含め、西ドイツとの一悶着を経て彼の解放に至ります。

晩年と死去

ベーツの晩年は、イギリスでの静かな生活に戻り、息子のマイケルがシーランドの運営を引き継ぎます。2012年、彼はアルツハイマー型認知症を患い、最終的に高齢者福祉施設で亡くなりました。彼の葬儀はサウスエンド＝オン＝シーで行われました。彼の生涯は、国と放送メディアの運営における独自の試みとして、今なお多くの人々の興味を惹いています。

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