パトリック・クェンティン

パトリック・クェンティンについて

パトリック・クェンティンは、数人の作家による共同ペンネームであり、彼らはいずれも探偵小説の執筆において特有の特徴を持っています。このペンネームの下で執筆したのは、リチャード・ウィルソン・ウェッブ、ヒュー・キャリンガム・ホイーラー、マーサ・モット・ケリー、メアリ・ルイーズ・アズウェルの4人です。彼らはそれぞれの作品やシリーズにおいて「Q・パトリック」や「ジョナサン・スタッグ」といった異なる名義を使い分けており、多彩な作品を生み出しました。

特にウェッブとホイーラーは、共にイギリス出身でありながら後にアメリカに移住し、探偵小説において多くの合作やホイーラーの単独作を残しました。1963年に短編集『金庫と老婆』によってアメリカ探偵作家クラブの特別賞を受賞し、彼らの作品の質の高さが証明されました。

探偵小説作家としての歴史

パトリック・クェンティンの探偵小説作家としてのキャリアは、ざっくりと三つの異なる時期に分けることができます。初期（1931~1935年）には、ウェッブが女性作家とのコンビを組んだり単独で作品を発表した時代です。この期間は彼のスタイルが模索されていた時期でもありました。

次に中期（1936~1950年頃）には、ウェッブとホイーラーが強力なコンビを組み、いくつかの作品が共作として発表されました。この時期には、演劇の要素を取り入れた作品が特徴であり、探偵役にはピーター・ダルースやティモシー・トラント警部補が据えられています。後期（1950年頃~1965年）になると、ホイーラーは単独で作品を発表し続けますが、クェンティン名義の作品が多く、特に『女郎蜘蛛』などではトラント警部補とダルース夫妻が共演し、ファンからも好評を得ることができました。

ウェッブの死後

ウェッブの死後、ホイーラーは探偵小説の執筆を行わなくなりますが、その後ミュージカル作家として成功し、トニー賞を何度も受賞することとなります。このように、パトリック・クェンティンの名義での活動は、彼らの独創的な作品が生み出される舞台となったのです。

日本においては、主にパトリック・クェンティン名義の作品が翻訳され1980年代より広まり、近年も新訳や再発が続いています。しかし、アメリカ本国では残念なことに、ほとんどの作品が入手困難であるため、その魅力を知るのは困難です。それでも、アメリカの出版社クリッペン＆ランドリュからは、彼らの短編作品を集めた書籍が定期的に刊行されています。

代表的な作品

パトリック・クェンティン名義の作品の中には『迷走パズル』や『女郎蜘蛛』など、特に人気の高い作品があります。また、彼らの作品はさまざまな探偵キャラクターを登場させ、多様性に富んだ物語が展開されており、読者は様々な視点からミステリーを楽しむことができます。

作品リストには、長編の他に短編集も多く含まれており、特に『金庫と老婆』はその名を広めるきっかけとなった作品です。これらの作品を通じて、パトリック・クェンティンの名前は探偵小説の中で一つのブランドとなっており、その名残を今でも多くのファンが追い求めています。

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