パナマ侵攻

パナマ侵攻

概要

パナマ侵攻（Invasion of Panama）は、1989年から1990年にかけてアメリカ合衆国とパナマ共和国の間で発生した軍事衝突である。当時のパナマの指導者であったマヌエル・ノリエガは、独裁政治を行い、麻薬密輸などの犯罪行為に関与していた。これを理由にアメリカが軍事侵攻を行い、結果的にノリエガが逮捕され、衝突は終息を迎えた。しかし、この行動は国際法に反するとしてアメリカに対する批判も根強い。

ノリエガ体制の背景

マヌエル・ノリエガは1983年からパナマの事実上の最高権力者として君臨していたが、その政権は非民主的で孤立したものだった。特に麻薬密輸のルートの中心地とされており、アメリカにとっては厄介な存在であった。意外なことに、ノリエガはCIAと協力関係にあり、冷戦時代の左派政権への対抗に従事していたことでも知られている。彼はそれによりアメリカ政府からの感謝状を受け取るなど、裏の関係を築いていた。

麻薬戦争と反ノリエガ運動の激化

しかし、1986年の「Cチェイス作戦」によりノリエガが麻薬輸出やマネーロンダリングに関与している疑惑が浮上し、1987年にはオマル・トリホスの暗殺への関与が指摘された。これに伴い、反ノリエガ派による排除の動きが加速した。アメリカは1988年にノリエガを起訴し、経済制裁を開始した。これがパナマ経済に深刻な影響を与え、国全体が混乱に陥った。ノリエガは退任を拒み、権力保持のためにあらゆる手段を用いた。

侵攻の決定と開始

1989年、アメリカの新大統領ジョージ・H・W・ブッシュは「麻薬戦争」を推進し、武力行使の決断を下した。12月20日、アメリカ軍は「大義名分作戦」としてパナマに侵攻を開始した。この作戦は、ノリエガによるアメリカ人への攻撃の防止やパナマ運河の保全を目的としていた。アメリカ軍は最新の軍事装備で武装した5万7384人の兵士を派遣し、パナマ国家防衛軍との激しい戦闘が展開された。

戦闘とノリエガの逮捕

アメリカ軍は圧倒的な火力を背景にパナマ市を迅速に制圧した。ノリエガは一時的にバチカン大使館に逃げ込んだが、アメリカの作戦「ニフティ・パッケージ」によって捕らえられ、1990年1月3日にアメリカ軍に拘束された。

終結とその後の影響

ノリエガは後にアメリカで麻薬関連の犯罪で有罪となり、長期の禁固刑を受けた。その後もフランスでの有罪判決を受けるなど、彼の人生は波乱に満ちていた。戦後、パナマ国防軍は解体され、新たに非軍事的な国家保安隊が設立された。ノリエガ政権の崩壊は、パナマの政治風景に長期にわたって影響を与えることとなった。

国際的な反響

この事件は国際法の観点から多くの批判を受け、アメリカの軍事介入が適切であったかという議論が続いている。特に、国際社会における無理な干渉がもたらすリスクを示す重要なケースとして認識されている。

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