パペーテ砲撃

パペーテ砲撃：第一次世界大戦初期の太平洋における艦砲射撃

1914年9月22日、第一次世界大戦の初期、ドイツ帝国海軍の東洋艦隊がフランス領ポリネシアのパペーテに対して行った艦砲射撃は、太平洋における戦いの火蓋を切る出来事の一つでした。この事件は、ドイツ艦隊による奇襲攻撃であり、その目的は、パペーテに蓄えられていた石炭の確保と、連合国軍の戦力に打撃を与えることでした。しかし、この攻撃は、単なる局地戦に留まらず、後の海戦の流れを大きく左右する要因となりました。

戦争勃発とドイツ東洋艦隊の動き

開戦の報せを受けた東洋艦隊司令官マクシミリアン・フォン・シュペー提督は、艦隊を太平洋に集結させました。装甲巡洋艦「シャルンホルスト」と「グナイゼナウ」を主力とし、巡洋艦「ニュルンベルク」と仮装巡洋艦「ティターニア」などを率いて、情報収集や補給を兼ねた作戦を開始しました。ニュルンベルクとティターニアはハワイへの情報収集とファニング島の海底ケーブル中継施設の攻撃に向かい、その後シュペー提督はシャルンホルストとグナイゼナウを率いてドイツ領サモア占領を試みるも失敗しました。艦隊は戦闘を渇望しており、シュペーはイースター島で艦隊と合流する前に、補給物資と石炭が豊富に蓄えられているパペーテを襲撃することを決定しました。

パペーテの防備

パペーテはフランス領オセアニアの首都でしたが、1914年当時は無線施設も無く、守備隊も少数でした。旧式砲艦「ゼレー」の艦長マキシム・デストラモー大尉は、ゼレーの100mm砲などを陸揚げし、即席の装甲車を準備するなど、可能な限りの防備を固めました。しかし、ドイツ装甲巡洋艦との戦力差は圧倒的であり、ドイツ艦隊は1500人もの上陸部隊を編成する事が出来ました。

砲撃戦の開始

9月22日午前7時、ドイツ艦隊はパペーテに接近し、警告を無視して砲撃を開始しました。フランス軍の砲台も反撃しましたが、ドイツ艦隊の圧倒的な火力に押され、標的は港内の艦船に移されました。フランス軍の指揮官デストラモーは、石炭の山を燃やし、港内に煙幕を張るように指示しました。ドイツ艦隊は、ゼレーと拿捕されていたドイツ貨物船ヴァルキューレを砲撃で沈めました。住民のほとんどは避難し、パペーテは火災に見舞われました。ドイツ軍は上陸をせずに、11時には撤収しました。

砲撃の結果

パペーテの町は大きな損害を受けました。コプラの店や市場などの建物が破壊され、経済活動は大きく停滞しました。2隻の艦船が沈没しましたが、両軍の軍人に死傷者はなく、ドイツの巡洋艦も無傷でした。しかし、この砲撃によって、ドイツ艦隊の作戦行動はイギリス海軍に把握され、その後のコロネル沖海戦へと繋がりました。また、パペーテでの砲撃戦で消費した弾薬の補給不足は、フォークランド沖海戦でのドイツ東洋艦隊壊滅の一因ともなりました。パペーテ防衛の責任者であったデストラモー大尉は、後にその責任を問われましたが、死後、名誉を回復されました。

結論

パペーテ砲撃は、第一次世界大戦の太平洋戦線における最初の重要な海戦の一つであり、ドイツ東洋艦隊の行動、その後の海戦、さらには戦局全体に大きな影響を与えました。この事件は、戦略的な観点から見ると、ドイツ軍が石炭を手に入れるという目的を達成できなかった一方で、連合国軍にドイツ艦隊の位置情報を与え、後の海戦の展開に繋がったという点で重要な意味を持ちます。パペーテの住民にとっては、経済的損失と混乱をもたらす、悲劇的な出来事でした。

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