パラリンピックシンボル

パラリンピックシンボルは、国際パラリンピック委員会（IPC）が制定するマーク、旗、そして様々な象徴の総称であり、パラリンピックムーブメントの根幹を成す要素です。

パラリンピックの根底にあるもの

パラリンピックのモットーは、「Spirit in Motion（スピリット・イン・モーション）」と定められています。これは2003年のIPC総会で採択されました。また、IPCはパラリンピアンの中に宿る力を重視し、「勇気（Courage）」「強い意志（Determination）」「インスピレーション（Inspiration）」「公平（Equality）」という四つの価値を活動の柱としています。

ロゴの歴史と変遷

パラリンピックのロゴは、大会の象徴として時代とともに変化してきました。最初に登場したのは1988年のソウルパラリンピックで、当時のオリンピックカラーである青・黄・黒・緑・赤の五つの太極をモチーフにしたデザインでした。

1994年のリレハンメルパラリンピックからは、人間の大切な構成要素である「心（スピリット）」「肉体（ボディ）」「魂（マインド）」を象徴する赤・青・緑の三色を用いたデザインに変更されました。このデザインは、人間の内面的な豊かさと身体性、そして精神性の調和を表していました。

そして、2004年のアテネパラリンピック閉会式からは、現在よく知られている三本の線がカーブを描くデザインへと変更されました。このデザインは「スリー・アギトス」と呼ばれています。「アギト（agitō）」という言葉はラテン語で「私は動く」という意味を持ちます。この三本の線は、パラリンピック選手が卓越したアスリートとして成長し、世界中の人々に感動と刺激を与える存在となるというIPCのビジョンを表現しています。また、ロゴ全体の丸い形状は、パラリンピックムーブメントが地球全体に広がり、世界中の人々を結びつける力を持っていることを示唆しています。

2019年10月20日、IPC創立30周年を記念して、ロゴのデザインがわずかに修正され、第四代目のロゴとして発表されました。この新しいロゴは、2022年の北京パラリンピック以降、大会エンブレムなどに使用されています。ただし、2020年の東京パラリンピックにおいては、大会エンブレムやデザインには第三代目のロゴが用いられましたが、パラリンピック旗や放送映像などでは第四代目のロゴが使用されるという形で、新旧のロゴが混在しました。

賛歌と聖火

パラリンピックの公式賛歌は、ティエリ・ダルニスが作曲した『未来への賛歌』（Hymn de l’Avenir）です。この曲は1996年のIPC総会で正式に採用され、同年のアトランタパラリンピック以降、大会旗の掲揚および降下の際に演奏されています。2001年にはグレアム・コナーズによって歌詞が加えられ、曲にさらなる深みが与えられました。

パラリンピックの聖火は、オリンピックとは異なる独自の採火方式をとっています。聖火は、近代パラリンピックの発祥の地とされるイギリスのストーク・マンデビル病院と、その時の開催国の各地で採火されます。これらの聖火は一つに集められ、開会式でメインスタジアムの聖火台に点火されます。

宣誓とエンブレム

パラリンピックの開会式では、オリンピックと同様に選手たちが宣誓を行います。現在では、参加アスリートの代表に加え、審判代表、コーチ代表も宣誓を行います。アスリート代表による宣誓は1960年のローマ大会から、審判代表は1972年のハイデルベルク大会から、コーチ代表は2012年のロンドン大会からそれぞれ始まりました。

各大会では、その開催都市の特色を反映した独自のエンブレムが作成されます。このエンブレムは開催都市によってデザインされ、IPCの承認を得た上で、大会に関連する資料、スポンサーの広報物、競技者のユニフォームなど、様々な場面で使用され、その大会独自のアイデンティティを表現します。

特別な栄誉

パラリンピックムーブメントに貢献した個人や団体を称える最高の栄誉として、「パラリンピックオーダー」があります。これは、パラリンピックの理想を体現する行動を示した人、パラリンピックスポーツの発展に顕著な功績を残した人、またはパラリンピック全体に優れた貢献をした人に贈られる賞です。

国旗・国歌の代用

特別な事情により、選手の国旗や国歌が存在しない場合や使用できない場合があります。このようなケースでは、オリンピックにおけるオリンピックシンボルと同様に、パラリンピックシンボルが国旗や国歌の代わりとして使用されることがあります。

これらの多様な要素が一体となって、パラリンピックというスポーツイベントの枠を超え、人間の無限の可能性と社会の包容性を世界に示す強力なシンボルとなっています。

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