パラ卓球

パラ卓球とは

パラ卓球（英語名：Para Table Tennis）は、障害のあるアスリートがプレイできるように開発された卓球競技です。障害者スポーツとして広く普及しており、パラリンピック競技種目の一つとしても知られています。この競技は、身体障害、視覚障害、知的障害を持つ選手たちが、それぞれの能力に応じて公平に競い合えるように工夫されています。国際的には国際卓球連盟（ITTF）が、一般の卓球と同様に競技規則を定めていますが、障害の種類や程度に応じた特別なルールも一部設けられています。

競技クラス分類

パラ卓球における最大の特色の一つは、選手の障害の種類や程度に応じて細かくクラス分けされている点です。これにより、選手は可能な限り公平な条件のもとで競技に臨むことができます。クラスは1から11までの11段階に分かれています。

座位 (Classes 1-5)

主に車いすを使用する身体障害のある選手が対象となるクラスです。数字が小さくなるほど障害の程度が重く、クラス1が最も重い障害を持つ選手、クラス5が最も軽い障害を持つ選手が区分されます。これらのクラスでは、椅子に座ったままプレイするため、サービスやコートの利用に関する特別なルールが適用されることがあります。

立位 (Classes 6-10)

立ったままプレイする身体障害のある選手が対象となるクラスです。こちらも数字が小さくなるほど障害の程度が重く、クラス6が最も重い障害、クラス10が最も軽い障害を持つ選手が区分されます。立位クラスの選手は、障害の種類（例えば、肢体不自由の部位や程度）に応じて分類されます。

知的障害 (Class 11)

知的障害のある選手が対象となるクラスです。このクラスは、基本的な卓球の技術やルールを理解し、実行できる選手が対象となります。知的障害を持つアスリートに競技参加の機会を提供する重要なクラスです。

競技規則

パラ卓球の基本的な規則は、国際卓球連盟（ITTF）が定める一般の卓球規則に準拠しています。しかし、障害の種類やプレイスタイルに合わせて、いくつかの重要な修正が加えられています。

最も顕著な例の一つは、座位クラスにおけるサービスに関するルールです。一般の卓球ではサービスが相手コートに入った後にサイドラインを越えて外に出た場合、失点となることがありますが、パラ卓球の座位クラスでは、これがレット（やり直し）となる場合があります。これは、車いすでの動きやコートの利用範囲の制約を考慮したものです。他にも、サービス時にボールを高くトスする必要がない、など、障害の種類に応じたルール調整が行われています。これらの特別ルールは、安全性を確保しつつ、より多くの選手が公平に競技に参加できるようにするために設けられています。

世界で活躍する選手たち

パラ卓球の世界には、驚異的な技術と不屈の精神を持つ素晴らしい選手たちが多数存在します。彼らは競技における卓越したパフォーマンスだけでなく、障害を持つ人々に希望とインスピレーションを与えています。

イブラヒム・ハマト選手 (エジプト、クラス6): 両腕を失いながらも、ラケットを口にくわえてプレイするという独自のスタイルで知られる選手です。そのユニークなプレイスタイルと挑戦する姿勢は、世界中の人々に感銘を与えています。
ナタリア・パルティカ選手 (ポーランド、クラス10): 片腕に障害がありますが、パラリンピックだけでなくオリンピックの卓球競技にも出場した経験を持つ、世界でも数少ない選手の一人です。障害の有無にかかわらずトップレベルで活躍できることを証明しました。
メリッサ・タッパー選手 (オーストラリア、クラス10): パルティカ選手と同様に、オリンピックとパラリンピック双方の卓球競技に出場した経験を持つ選手です。オーストラリア代表として、障害のあるアスリートの可能性を示しました。
別所キミヱ選手 (日本、クラス5): 2016年のリオデジャネイロパラリンピックに68歳で出場し、当時の日本選手団における史上最高齢出場記録を樹立しました。長年にわたり第一線で活躍し続けるその姿は、多くの人々に勇気を与えています。

運営体制

パラ卓球の国際的な統括団体は、一般の卓球と同様に国際卓球連盟（ITTF）です。ITTFの中にパラ卓球部門が設置されており、競技規則の策定や国際大会の運営などを担っています。日本国内では、日本肢体不自由者卓球協会や日本知的障がい者卓球連盟といった団体が中心となり、選手の育成や国内大会の開催、普及活動を行っています。

パラ卓球は、単なるスポーツ競技としてだけでなく、障害のある人々の社会参加や自己実現を促進する重要な手段としても位置づけられています。選手たちは、日々の練習を通じて技術を磨き、国際舞台での活躍を目指しています。

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