パリの調香師 しあわせの香りを探して

パリで紡がれる、香り、そして人生の物語『パリの調香師 しあわせの香りを探して』

2019年、フランスで公開された映画『パリの調香師 しあわせの香りを探して』(原題:Les Parfums)は、才能あふれる女性調香師と、彼女を支える運転手の男性との出会いを軸に、人生の再生と、人と人との繋がりを繊細に描いた感動作です。

物語の中心人物は、パリの香水業界で名を馳せる天才調香師アンヌ・ヴァルベルグ。しかし、彼女は成功の裏で、ある苦悩を抱えていました。一方、主人公のもう一人、ギヨーム・ファーヴルは、離婚調停中で娘の親権を巡り苦悩する職業運転手です。交通違反によるペナルティで仕事にも危機が訪れ、彼はまさに人生の岐路に立っていました。

そんな2人の出会いは、偶然にも訪れます。アンヌの仕事で運転手を務めることになったギヨーム。気難しいアンヌは、ギヨームの些細な行動にも厳しい目を向け、ギヨームはアンヌの傲慢さに不満を募らせます。互いに反発しながらも、仕事を通して徐々に2人の間には信頼関係が芽生えていきます。

アンヌの仕事を通じて、ギヨームは、アンヌが抱える秘密、そして彼女が失いかけている大切なもの、それは嗅覚であることに気づいていきます。4年前、有名ブランドのプロモーションで多忙を極めたアンヌは、嗅覚を失っていたのです。その事実をひた隠し、仕事に追われるアンヌの姿は、切なく、そして共感を呼びます。

ギヨームは、アンヌの嗅覚を取り戻すため、そしてアンヌ自身の幸せを願って、彼女を支えます。彼は、アンヌの娘の誕生日を特別な日にするため、元妻に内緒で娘を海へ連れて行くなど、アンヌの家族にも温かい手を差し伸べます。ギヨームの優しさに触れ、アンヌは徐々に心を開いていきます。

しかし、アンヌの嗅覚の回復への道は、決して平坦ではありません。新たな仕事の最中、アンヌは再び嗅覚を失ってしまう事態に陥り、病院へ担ぎ込まれることに。そこへ、嗅覚の専門医が駆けつけ、アンヌは初めて自身の病と真剣に向き合う決意をします。

そして、アンヌは調香師として復帰するため、ギヨームの協力を得ようと、彼のアルバイト先に現れます。当初は自分の才能を疑っていたギヨームでしたが、アンヌの強い意志と情熱に感銘を受け、彼女と共に働くことを決意。2人は協力して、新たな香水を生み出すため、力を合わせ、ついに世界的なブランド、ディオールに売り込みにいきます。

映画『パリの調香師 しあわせの香りを探して』は、困難を乗り越え、人生を再生していく2人の姿を通して、私たちに勇気と希望を与えてくれる作品です。香りという繊細なテーマを背景に、人間ドラマが丁寧に描かれ、観る者の心を温かく包み込んでくれます。また、フランスの美しい風景や、香水作りの過程も、見どころの一つです。ディオールの協賛など、リアリティも追求されている点も注目です。

この映画は、2020年6月、新型コロナウイルス感染拡大の影響で映画館が閉鎖されたフランスにおいて、映画館再開初日の先行プレミア上映で高い評価を得て、公開時には興行成績1位を記録するなど、大きな話題を呼びました。批評家の評価も高く、Rotten Tomatoesでは24件の評論全てが高評価で平均点は10点満点中7点と、高い評価を得ています。

ぜひ、この感動の物語を、劇場で体験してみてください。

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