パリはわれらのもの

パリはわれらのもの：ヌーヴェルヴァーグの息吹が感じられる青春群像劇

1961年、フランスで公開されたジャック・リヴェット監督の長編映画『パリはわれらのもの』。本作は、ヌーヴェルヴァーグを代表する映画作家たちの才能が結集した、青春と芸術、そして政治的影を孕む複雑な人間模様を描いた作品として知られています。

ヌーヴェルヴァーグの作家たちが集結した意欲作

リヴェット監督は、本作で長編映画デビューを果たしました。ジャン＝リュック・ゴダールやクロード・シャブロルといった、後のヌーヴェルヴァーグを代表する映画作家たちが、本作の製作に深く関わっている点も見逃せません。ゴダールは出資とプロデュース、シャブロルは出資とプロデュースを担当し、さらに、フランソワ・トリュフォーが設立した制作会社も共同製作に加わっています。この錚々たるメンバーの参加は、本作がヌーヴェルヴァーグの精神を受け継ぎ、そのムーブメントの中核を担う作品であることを示しています。

1957年のパリを舞台にした、若者たちの葛藤

物語は、1957年の夏のパリを舞台に展開します。若者たちがウィリアム・シェークスピアの戯曲『ペリクリーズ』の上演準備に奮闘する様子が描かれます。しかし、彼らの準備は順風満帆とはいかず、様々な問題や事件が次々と発生し、劇団は分裂の危機に瀕します。

シェイクスピア劇の上演準備と、複雑に絡み合う人間関係

シェークスピア劇の上演準備という枠組みは、登場人物たちの複雑な人間関係を浮き彫りにする効果的な装置として機能しています。それぞれの登場人物は、個性的なキャラクターとして描かれ、彼らを取り巻く環境や社会情勢も物語に深く関わってきます。

特に、マッカーシズムの犠牲者であるアメリカ人、フィリップ・カウフマンの存在は、物語に緊張感を与えています。彼の登場によって、劇団内はさらに混乱を極め、登場人物たちの葛藤は深まります。

豪華なキャストとスタッフ陣

本作には、フランソワーズ・プレヴォー、ダニエル・クロエム、マルカ・リボヴスカ、ポール・ビシリアなど、当時のフランス映画界を彩る個性豊かな俳優たちが脇役として出演しています。さらに、ゴダール、ドゥミ、シャブロル、リヴェット自身もカメオ出演しており、ヌーヴェルヴァーグのムーブメントの息吹が感じられます。撮影監督はシャルル・L・ビッチ、助監督にはジャン・エルマンとシュザンヌ・シフマンが名を連ねています。

長い撮影期間を経て、公開された傑作

1958年7月から11月にかけて行われた撮影は、公開まで3年もの時間を要しました。しかし、1961年12月13日の公開後、本作は高い評価を受け、ヌーヴェルヴァーグを代表する作品として、現在も多くの映画ファンを魅了し続けています。トリュフォーは自身の作品『突然炎のごとく』で、この映画のタイトルをジャンヌ・モローに叫ばせる演出をするほど、本作に強い印象を受けていたことがうかがえます。

まとめ

『パリはわれらのもの』は、ヌーヴェルヴァーグの作家たちが結集し、若者たちの青春と葛藤を鮮やかに描いた傑作です。シェークスピア劇の上演準備というユニークな設定と、複雑に絡み合う人間関係、そして時代の影が織りなすドラマは、観る者に深い感動と余韻を与えてくれるでしょう。まさに、ヌーヴェルヴァーグの精神を体現した、時代を超えて愛される名作と言えるでしょう。

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