ジャック・リヴェット

ジャック・リヴェット：ヌーヴェルヴァーグの巨匠、その生涯と作品

ジャック・リヴェット(1928年3月1日-2016年1月29日)は、20世紀を代表するフランスの映画監督、脚本家、批評家である。ヌーヴェルヴァーグの中心人物として知られ、その革新的な演出スタイルと実験的な作品群は、世界中の映画作家に多大な影響を与えた。

ルーアンからカイエ・デュ・シネマへ

1928年、フランスのルーアンに生まれたリヴェットは、若き日から映画に深い関心を抱いていた。1950年、エリック・ロメールと共に映画雑誌『ラ・ガゼット・デュ・シネマ』を創刊。この雑誌は、ジャン＝リュック・ゴダールも執筆するなど、後のヌーヴェルヴァーグを牽引する若手映画人たちにとって重要なプラットフォームとなった。しかし、リヴェットは、アンドレ・バザンらが中心となって創刊された影響力のある映画雑誌『カイエ・デュ・シネマ』に合流し、『ラ・ガゼット・デュ・シネマ』は廃刊する。

1952年からは『カイエ・デュ・シネマ』で映画批評を執筆、1953年にはホークスの才能を鋭く分析した評論を発表するなど、批評家としても高い評価を得た。その後、ロメールの後を継ぎ、1963年から1965年にかけて『カイエ・デュ・シネマ』の編集長を務めた。批評家としての経験は、彼の映画制作にも大きな影響を与え、独自の視点と深く練り込まれた脚本、そして実験的な映像表現へと繋がっていった。

即興と実験：独自の映画世界

監督としては、1949年から短編映画製作を開始。ゴダール主演の作品も手がけた。1960年、長編デビュー作『パリはわれらのもの』を発表すると、その独自のスタイルが注目を集める。台本に縛られない即興的な演出は、俳優たちの自由な表現を引き出し、リアルで生命力あふれる映像を生み出した。この手法は、後の作品においても貫かれ、リヴェット作品独自の持ち味となった。

代表作として、反宗教的な内容で物議を醸した『修道女』(1966年)、4時間12分に及ぶ長編『狂気の愛』(1969年)、そして映画史上類を見ない12時間40分にも及ぶ超長編『アウト・ワン』(1971年)などが挙げられる。『アウト・ワン』は、その圧倒的な長さだけでなく、複雑な構成と実験的な手法で知られ、近年になってようやく日本でも公開された。

また、『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(1974年)は、軽妙な語り口と女性たちの友情を描いた作品として高い評価を受け、哲学者ジル・ドゥルーズからも絶賛された。

80歳を超えても衰えぬ創造力

1980年代以降も、ビュル・オジエ、パスカル・オジェ親子を共演させた『北の橋』、ジェーン・バーキン、ジェラルディン・チャップリンを起用した『地に堕ちた愛』、そしてエミリー・ブロンテの小説を映画化した『嵐が丘』など、数々の話題作を発表した。バルザックの小説を原作とした『美しき諍い女』(1991年)はカンヌ国際[[映画祭]]で審査員グランプリを受賞するなど、高い評価を受けた。

リヴェットは、2000年代に入っても精力的に映画製作を続け、『恋ごころ』(2001年)、『ランジェ公爵夫人』(2007年)、『ジェーン・バーキンのサーカス・ストーリー』(2009年)など、80歳を超えても衰えぬ創造性を示し続けた。

2016年、パリで87歳で死去。その死は、世界中の映画界に大きな衝撃を与えた。

映画史に刻まれた足跡

ジャック・リヴェットは、ヌーヴェルヴァーグの代表的な監督として、フランス映画、ひいては世界映画史に大きな足跡を残した。彼の革新的な演出、実験的な手法、そして独自の視点から生まれた作品群は、現在もなお多くの映画作家たちに影響を与え続けている。彼の死は、その輝かしいキャリアの終焉を告げたが、彼の作品はこれからも多くの人々に感動と刺激を与え続けるだろう。

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