パリ国際航空条約

パリ国際航空条約について

1919年10月13日、フランスのパリで締結されたパリ国際航空条約は、正式には「航空規制に関する条約」として知られています。この条約は、国際航空における政治的な課題を解決するための初めての取り組みとして歴史に名を刻み、国際民間航空機関（ICAO）の前身である国際航空委員会（ICAN）の後援により実現しました。条約の目的は、各国の領空に対する認識と規制に起因する混乱を軽減し、基礎的な原則と規定を確立することでした。

歴史的背景

航空の発展は1913年にセントピーターズバーグ＝タンパ航空線が開通したことから始まり、初の旅客輸送を実現しました。それ以前は、航空機は主に郵便や貨物輸送に用いられていました。しかし、第一次世界大戦の勃発（1914年）を契機に、航空機は国際的に活用されるようになり、軍事作戦や貨物輸送にも用いられました。この国際的な航空活動の中で、各国の領空に関する主権の問題が浮上しました。

当時の議論は2つの見解に収束しました。一つは、すべての国が自国の領土の上空に対して主権を持つか、持たないかというものでした。1919年のパリ協定では、この問題をもとに全ての国は自国の領空に対する主権を有することが確認されました。

条約にはイギリス帝国やフランス、イタリアなど多くの国が署名しましたが、最終的に批准したのは10か国に限られ、それに加えてペルシアも批准しました。この条約は1922年に発効し、その後1944年のシカゴ条約によって廃止されました。

条約の主な原則

パリ国際航空条約にはいくつかの重要な原則が掲げられました。以下はその概略です：

1. 主権の確立：各国は自国の領土とその上空、及び領海に対し、絶対的な主権を有します。このため、外国の航空機についても自国の領空への進入を拒否する権利が保障されます。
2. 平等な適用：国は、自国の航空機と外国の航空機に対し、自国の領空における規制を平等に適用する必要があります。
3. 通過の自由の確保：国は主権及び安全保障が尊重される限り、自国と他の締約国の航空機に対し、できるだけ多くの通過の自由を与えるための規則を策定しなければなりません。
4. 航空機の登録：すべての航空機は国に登録する必要があり、その国籍は登録国に基づきます。

条約の構成内容

条約は全9章、合計43条から成り立っています。以下の事項が定められています：

• - 総則（General Principles）：航空活動の基本的な原則を定義。
• - 航空機の国籍（Nationality of aircraft）：航空機の登録国籍について。
• - 耐空・性能証明書（Certificates of airworthiness and competency）：航空機の安全基準に関する証明。
• - 外国領土の上空飛行許可（Admission to air navigation above foreign territory）：外国の上空を飛行する際の手続き。
• - 出発、飛行中、着陸時に遵守すべき規則（Rules to be observed on departure when under way and on landing）：各段階で守るべきルール。
• - 輸送禁止（Prohibited transport）：特定の輸送が禁じられている項目。
• - 国有機（State aircraft）：国家が使用する航空機に関する規定。
• - 国際航空委員会（International Commission for air navigation）：航空ナビゲーションに関する国際的な協力機関。
• - 最終条項（Final Provisions）：条約の適用と解釈に関する最終的な規定。

この条約は国際航空活動の基礎を築く重要な実績であり、当時の国際社会における航空機の利用に対する考え方を一新させるものでした。

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