パルス・デトネーション・エンジン

パルス・デトネーション・エンジン（PDE）とは

パルス・デトネーション・エンジン（Pulse Detonation Engine : PDE）は、デトネーション波、すなわち爆轟波を利用したエンジンの一種です。爆轟波は、2～3km/sという極超音速で衝撃波を伴いながら伝播する燃焼波であり、この現象を利用することで、従来のエンジンよりも高い理論熱効率を達成できると期待されています。PDEは、燃焼プロセスにおいて爆轟を利用するため、従来の定圧燃焼を用いるガスタービンエンジンに比べて、原理的に高い熱効率が見込まれます。

PDEと並んで、デトネーション波を利用するエンジンとして回転デトネーションエンジン（Rotating Detonation Engine : RDE）が知られています。現在、これらのエンジンは各国で積極的に研究開発が進められている内燃機関です。

PDEの概要

PDEの最大の特徴は、燃焼行程でデトネーション（爆轟）を利用することです。これにより、従来の定圧燃焼を利用したガスタービンエンジンよりも高い熱効率が理論的に期待できます。また、スクラムジェットエンジンとは異なり、静止状態からエンジンを始動できるという利点も持ち合わせています。

従来のガスタービンエンジンの燃焼器をPDEに置き換えることで、タービンを駆動することが可能です。さらに、複数のデトネーション管の位相をずらして運転することで、ノズルやタービン入口における流れの脈動を平滑化することが可能になります。この特性により、PDEは従来のエンジンよりも効率的かつスムーズな運転が期待されています。

歴史

PDEに関する研究は古くから行われており、理論構築や実験が長年にわたって続けられてきました。以下に、PDE開発における主な出来事を記します。

2004年3月17日: 筑波大学でパルス・デトネーション・ロケットのシステム試験が実施されました。
2006年7月28日: パルス・デトネーション・ロケット「とどろき」の滑走試験が行われました。
2008年1月31日: アメリカ空軍研究所は、カリフォルニア州モハーヴェ砂漠でルータン ロング・イージーにPDEを搭載した試験機の初飛行に成功しました。この試験機は、現在国立アメリカ空軍博物館に展示されています。
2013年10月20日: 名古屋大学、筑波大学、JAXAなどの研究グループが、PDEによる初の飛行実証に成功しました。
近年: PDエアロスペースが宇宙機に搭載するPDEの開発を進めています。
2021年7月27日: JAXAは、観測ロケットS-520-31号機による深宇宙探査用デトネーションエンジンの宇宙飛行実証実験に世界で初めて成功しました。この実験では、PDEとRDEの両方がテストされました。

関連事項

PDEに関連する技術や現象として、以下のものが挙げられます。

パルスジェット: PDEと同様に、間欠的な燃焼を利用するエンジンの一種です。
ノッキング: 内燃機関で発生する異常燃焼現象の一つです。
爆轟: 衝撃波を伴う燃焼現象で、PDEの原理の根幹をなすものです。
ハインケル HeS 40: 燃焼行程は異なりますが、PDEと類似の構造を持つエンジンです。

外部リンク

PDEに関するより詳しい情報や、最新の研究成果については、以下の資料も参考になります。

大八木重治「パルスデトネーションエンジン開発に向けた基盤研究」『総合研究機構研究プロジェクト研究成果報告書』、埼玉大学総合研究機構、2005年。
水素/空気パルスデトネーションエンジンの地上試験 - YouTube
* パルスデトネーションエンジンの解説 - YouTube

これらの情報を通じて、PDEの研究開発の現状と未来への展望について理解を深めることができるでしょう。PDEは、航空宇宙分野における次世代エンジンとしての活躍が期待されています。

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