ルータン ロング・イージー

ルータン ロング・イージー(Rutan Long-EZ)

ルータン ロング・イージーは、アメリカの航空技術者バート・ルータンによって設計された、複座の組み立て式飛行機です。1979年に初飛行を遂げ、その独特なエンテ型デザインと優れた航続距離により、多くの航空ファンや愛好家から支持を集めました。

設計と特徴

ロング・イージーは、同じくルータンが設計したバリ・イージーの改良型として開発されました。原型機（機体記号N79RA）は1979年6月12日に初飛行しています。主な改良点としては、胴体の延長と主翼面積の拡大が挙げられます。これにより、燃料を含む積載量が増加し、内部スペースも広くなりました。エンジンには、ライカミング・エンジンズ製のO-235（出力約110hp）を搭載し、バリ・イージーで必要だった機首部のバラストを廃止しています。

操縦席は、半リクライニングシートで、右側の肘掛にはジョイスティック型の操縦桿が設置されています。機体下面にはエアブレーキが備えられており、主翼端のラダーを外側に展開することでもエアブレーキの代用が可能です。

長距離飛行を目的とした設計がなされており、200Lの燃料で約10時間、2,500kmの飛行が可能です。さらに、後席に燃料タンクを追加すれば、航続距離は7,700kmにも達します。オプションとして、主翼下に装着できるトラベルポッドが用意されており、小規模な荷物を運搬することも可能です。

1980年から1985年にかけて組み立てキットとして販売され、2005年末の時点で、約700機のロング・イージーが連邦航空局に登録されています。

実用例

その長時間の飛行能力を活かし、アメリカ海洋大気庁では、二酸化炭素や水蒸気の空中測定にロング・イージー（機体記号N3R）を利用しています。また、小型機ながら長距離飛行が可能なため、個人利用でも人気があります。

著名な事例としては、歌手のジョン・デンバーが1997年にロング・イージーを操縦中に墜落死した事故があります。原因は、不慣れな機体で、操縦席から見えない位置にある燃料装置の操作ミスとされています。

改造機

ロング・イージーをベースにした改造機も存在します。アメリカのロケット開発企業XCORエアロスペースは、ロング・イージーのエンジンを2基のロケットエンジンに換装した実証機「XCOR イージー・ロケット」を製作しました。これは、ロケットレーシングリーグ向けのレース機開発の基礎となる予定でしたが、最終的にはベロシティー SEがベースとして使用されました。

また、アメリカ空軍研究所は2008年に、パルス・デトネーション・エンジンを搭載した改造機の初飛行に成功しています。この機体は、国立アメリカ空軍博物館に展示されています。

性能諸元

搭乗員：2名
全長：5.12m
全幅：7.9m
全高：2.4m
翼面積：7.62m²（カナード翼面積も合わせた場合8.81m²）
空虚重量：345kg
エンジン：ライカミング・エンジンズ O-235（空冷式、出力108hp～118hp、プロペラ推進）
巡航速度：291km/h
最大速度：340km/h
航続距離：2,222km（巡航速度時）

関連事項

エンテ型飛行機
バート・ルータン
ルータンの製作した組み立て式飛行機
ルータン バリ・ビゲン
* ルータン バリ・イージー

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