パルディスキ

パルディスキは、エストニアの首都タリンから西へ約45km、ハリュ県に位置する港町です。その歴史は古く、元々はスウェーデン人が暮らす小さな漁村でした。18世紀になると、ロシア帝国がこの地に海軍基地を建設し、1762年には「バルト海の港」を意味する「バルチースキー・ポルト」と改名されました。エストニア語では1933年から、同じ意味を持つ「パルディスキ」という名で呼ばれています。

この町の歴史において特筆すべきは、ソビエト連邦時代に建設された原子力潜水艦訓練センターです。1962年に開設されたこの施設は、当時ソ連最大級の規模を誇り、2基の原子炉を備えていました。最盛期には約16,000人が働き、その存在は町全体を厳重な有刺鉄線で囲まれた閉鎖都市へと変えました。エストニア国内では、パルディスキとシッラマエの2都市が閉鎖都市として知られています。

1994年8月、ロシア海軍が撤退し、1995年9月にはロシアが原子炉の管理権も放棄したことで、パルディスキは長い閉鎖から解放されました。ソ連時代、この町にはエストニア人の姿はほとんど見られませんでしたが、独立後は港湾を中心にエストニアの町作りが進められています。現在では、ソ連時代の面影を残すアパートや軍事施設の廃墟が、観光客にとって魅力的なスポットとなっています。

また、パルディスキは、スウェーデンのカペルシャーとの間で、タリンク社が運航するフェリーの拠点ともなっています。この航路は、バルト海を越えてスカンジナビア半島へのアクセスを容易にし、観光客やビジネスマンの移動を支えています。

パルディスキは、その歴史的な背景と現在の姿を通じて、エストニアの歴史と文化を物語る重要な場所です。かつての閉鎖都市としての暗い過去を背負いながらも、現在は新たな未来へと歩みを進めています。ソ連時代の遺産を巡る観光や、美しいバルト海の景色を眺めるなど、様々な楽しみ方ができる町として、今後ますます注目されていくでしょう。

関連事項として、閉鎖都市というキーワードもパルディスキを理解する上で重要です。ソ連時代に軍事的な理由から一般人の立ち入りが制限されていた都市であり、パルディスキもその一つとして特異な歴史を刻んできました。

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