パル・ジョーイ

パル・ジョーイ

『パル・ジョーイ』は、1940年にアメリカのブロードウェイで初めて上演されたミュージカルで、その魅力から多くの再演を重ねている名作です。この作品は脚本をジョン・オハラ、楽曲をロジャース&ハートのリチャード・ロジャースとロレンツ・ハートが手掛けています。タイトルに含まれる「ジョーイ」は主人公の名前で、「パル」は友人や相棒を意味しています。

概要

『パル・ジョーイ』は、ロジャース&ハートの作品の中でも特に魅力的なものとされており、「ブロードウェイで最も愛されているミュージカル」としても知られています。特筆すべき点は、主人公がアンチヒーローとして描かれていることで、初めてこのようなキャラクターがミュージカルに登場した作品でもあります。初演では、後に映画スターとなるジーン・ケリーがジョーイ役を演じ、その存在感で多くの観客を惹きつけました。

1957年には、本作を基にした映画『夜の豹』も制作され、さらなる人気を博しました。

原作

このミュージカルの原作は、ジョン・オハラによる同名の小説です。小説は「ジョーイという男のスラングだらけの手紙」という独自の形式をとっており、主人公の個性的なキャラクターを際立たせています。

あらすじ

物語は1930年代のシカゴを舞台にしています。主人公のジョーイ・エバンスは、ナイトクラブで働くシンガーであり、彼の夢は自分のクラブを持つことです。ジョーイは軽い性格で、女性に対してもプレイボーイ的な態度を崩さず、惹かれる女性たちからは憎まれないキャラクターです。

ナイトクラブの人気スターであるグラディスと過去に関係があったジョーイですが、関係は終わったものの彼女の未練は残ります。また、コーヒーショップで働くリンダは、ジョーイに出会い、彼に恋心を抱くようになります。そんな中、ある大富豪の妻であるヴェラが、ジョーイに出会い彼を魅力的だと感じ始めます。最初は軽くあしらっていたヴェラも、ジョーイの才能に気づき、彼に投資をすることを決心します。

ヴェラの支援によって、ジョーイは自分自身のナイトクラブを経営することができ、繁盛します。しかし、ショーの内容が期待には遠く、次第にジョーイは苛立ちます。また、業界のタフな現実としてギャングたちが彼のビジネスを脅かし、元恋人グラディスとの衝突も発生します。グラディスはジョーイに見切りをつけ、自分の人生を取り戻すための決断を下します。

使用楽曲

『パル・ジョーイ』には印象的な楽曲が多数含まれています。代表的な曲には「I Could Write A Book」、「Bewitched, Bothered and Bewildered」、「Zip」、「In Our Little Den of Iniquity」、そして「You Mustn't Kick It Around」があります。これらの楽曲は、作品全体の魅力を高め、長年にわたって愛され続けている理由の一つです。

受賞歴

このミュージカルは1952年の再演版で、ニューヨーク演劇批評家協会賞最優秀ミュージカル賞やドナルドソン賞最優秀ミュージカル賞を受賞しました。批評家からも評価され、ニューヨーク・ヘラルド・トリビューンでは「素晴らしい。シニカルで独創的」と評されました。

日本での公演

『パル・ジョーイ』は日本でも公演が行われており、1989年に『魅せられてヴェラ』というタイトルで上演、1991年には宝塚歌劇団による公演が行われました。また、2010年には「Pal Joey〜パル・ジョーイ」というタイトルで青山劇場で上演され、多くの観客を魅了しました。これらの公演は、作品の持つ無限の魅力を再確認する機会となりました。

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