パレフ

パレフは、ロシア中部のイヴァノヴォ州に位置する人口約4,600人の小さな町です。州都イヴァノヴォと東のニジニ・ノヴゴロドを結ぶ街道沿いにあり、古くからロシアの伝統美術工芸の中心地として栄えてきました。特に、イコン制作と漆細密画は、パレフを代表する芸術として世界的に知られています。

18世紀以来、パレフはイコン制作の中心地の一つでした。1762年から1774年にかけて建てられた十字架挙栄聖堂には、この地の伝統的なイコン（壁画イコンを含む）の優れた作例が数多く残されています。これらのイコンは、パレフの美術工芸のルーツを示す貴重な遺産です。

20世紀に入ると、パレフの美術は新たな展開を見せます。1918年、装飾美術に携わっていた人々が、新しい絵画制作のための組合を設立しました。そして、1920年代にはイヴァン・イヴァノヴィチ・ゴリコフが、漆による細密画『楽園のアダム』を発表。この作品は、パレフ独特の様式である「パレフ細密画」の誕生を告げるものでした。その後、パレフ細密画は独自の発展を遂げ、1924年にパレフ古典絵画組合、1932年にパレフ芸術家協会、1953年には芸術制作工房が設立され、その発展を支えました。

現在、パレフには大きな工場はありませんが、廃業した工場などが散在しています。道路の整備状況もあまり良いとは言えません。しかし、この小さな町には、細密画制作やイコン制作などの美術工芸を主な産業として、多くの芸術家が活動しています。また、工芸学校があり、未来の芸術家を育成しています。パレフ美術館をはじめとする複数の美術館や、パレフで活躍した芸術家を記念する個人美術館も多く、芸術愛好家にとっては見逃せないスポットとなっています。芸術家の工房や、周囲に点在する聖堂群も見どころの一つです。

パレフは、ロシアの伝統的な芸術文化に触れることができる、魅力的な町です。その独特の芸術様式は、世界中の人々を魅了し続けています。訪れる人々は、歴史的な聖堂や美術館、そして芸術家の工房を巡ることで、パレフの深い芸術的遺産を肌で感じることができるでしょう。

脚注

パレフの人口は2021年時点で4,633人
イヴァノヴォ州第3の都市シューヤから東へ30km
十字架挙栄聖堂は1762年から1774年にかけて築かれた

外部リンク

([ロシア]]語) [https://web.archive.org/web/20090415054648/http://palekh-online.ipn.ru/

もう一度検索