パレロンのアポロドロス

パレロンのアポロドロス：ソクラテスの熱心な弟子

パレロンのアポロドロスは、古代ギリシアのアテナイ、特に旧港パレロンを故郷とする著名な人物です。彼は、歴史に名を残す哲学者ソクラテスの熱心な弟子として知られており、プラトンやクセノポンといった当時の著名な思想家の著作に幾度となく登場することから、その存在感を伺い知ることができます。

プラトンの著作において、アポロドロスは『ソクラテスの弁明』『饗宴』『パイドン』の三作品に重要な登場人物として描かれています。

『ソクラテスの弁明』では、ソクラテスの裁判における支援者として、兄のアイアントドロスと共に活動した様子が記されています。さらに、ソクラテスに科せられた罰金の保証人にも名を連ねており、プラトン、クリトン、クリトブロスといった著名な人物と共にその役割を担っていました。この事実は、アポロドロスが相当な資産家であった可能性を示唆しています。

『饗宴』では、アポロドロスは物語の導入部でプラトンの兄グラウコンらとの会話を交わし、その中でパレロン出身であること、ソクラテスの弟子であること、そして激情家であることが明らかになります。この描写は、アポロドロスの人物像を鮮やかに描き出しています。

『パイドン』では、ソクラテスが死刑判決を受け、毒杯を飲む場面でアポロドロスが激しく悲嘆し、大声で泣き喚いた様子が克明に描かれています。このエピソードは、アポロドロスがソクラテスに対して深い愛情と敬意を抱いていたことを物語っています。

一方、クセノポンの著作『ソクラテスの思い出』と『ソクラテスの弁明』にもアポロドロスは登場します。

『ソクラテスの思い出』では、ソクラテスが高級娼婦テオドテを訪れた際の一行の中にアポロドロスがいたことが記されています。これは、アポロドロスがソクラテスの日常生活にも深く関わっていたことを示しています。

『ソクラテスの弁明』では、ソクラテスが死刑宣告を受けた後、アポロドロスがその不当性を嘆き悲しむ様子が描かれています。「ソクラテスが不当に死刑に処せられるのを目の当たりにするのは耐え難い」と訴えるアポロドロスに対し、ソクラテスは「正当な死刑よりもましだ」と冗談めかして彼を慰めたとされています。このやりとりは、師弟間の深い信頼関係と、アポロドロスの人間味あふれる一面を際立たせています。

これらの文献から、パレロンのアポロドロスは単なるソクラテスの弟子という枠を超え、ソクラテスの生涯に深く関わり、その思想や行動に大きな影響を受けた人物であったことが分かります。激情家で熱心な性格であった一方で、財力もあり、ソクラテスとその周辺の人々との強い絆で結ばれていた人物像が浮かび上がります。彼の存在は、ソクラテスの哲学がいかに人々の心に深く刻まれたかを如実に示すものと言えるでしょう。

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