パレンケ

パレンケ：マヤ文明の神秘に包まれた古代都市

メキシコ南東部のチアパス州に位置するパレンケは、マヤ文明を代表する古代都市遺跡です。鬱蒼とした密林の中に、かつて栄華を誇った都市の面影を色濃く残す、宮殿を中心とした数々の建造物が点在しています。7世紀に最盛期を迎え、高度な文明を築き上げたマヤ人の生活や信仰、社会構造を垣間見ることができる貴重な場所として、世界中から多くの研究者や観光客が訪れています。

発掘の歴史と驚愕の発見

パレンケ遺跡の存在が知られるようになったのは18世紀半ば、スペイン人による発見がきっかけでした。本格的な発掘調査が始まったのは1948年。そして1952年、メキシコの考古学者アルベルト・ルスによる画期的な発見が考古学界に衝撃を与えました。

ルスは「碑文の神殿」と呼ばれるピラミッドの地下深くに隠された墓室を発見。そこには、数多くの副葬品と共に、7世紀にパレンケを治めたパカル王（パカル2世、8アハウの偉大なパカルなどとも呼ばれる）の遺体が安置されていました。翡翠の仮面をつけた王の遺体、精緻な装飾品、そして壁面に刻まれたマヤ文字や絵画は、マヤ文明の高度な芸術性と宗教観を如実に示しています。この発見は、それまでの定説を覆すものでした。中央アメリカのピラミッドは単なる神殿ではなく、王の墓として機能していたという事実が明らかになったのです。

パレンケの主要建造物

パレンケ遺跡には、多くの重要な建造物が残されています。

宮殿: 王族の住居と推測される中心的な建物。マヤ建築としては珍しい4階建ての塔が特徴的で、天体観測に使われた可能性も指摘されています。
碑文の神殿: パレンケで最も高いピラミッド。パカル王の墓室がこのピラミッドの基底部に発見されました。内部の壁にはマヤ文字が刻まれており、王の死後、息子であるカン・バラム王によって建立されたと推測されています。
* その他の神殿: 「十字の神殿」、「葉十字の神殿」、「太陽の神殿」など、複数の神殿が存在します。これらもカン・バラム王に関連する建造物と考えられ、王に関する石板などが発見されています。

石棺の浮き彫りと宇宙人説

パカル王の石棺の蓋には、独特の浮き彫りが施されています。横から見ると、まるで宇宙飛行士がロケットに乗り込んでいるかのような姿に見えることから、一部ではマヤ文明が宇宙人によって築かれたという説が提唱されました。この説は、エーリッヒ・フォン・デニケンの著書『未来の記憶』によって広く知られるようになりました。しかし、現在ではこの図柄は、横たわる人物の上にトウモロコシをモチーフにした十字架が描かれていると解釈されています。

世界遺産登録

パレンケ遺跡は、1987年に「古代都市パレンケと国立公園」としてユネスコの世界遺産に登録されました。その登録基準は、以下の4点です。

1. 人類の創造的才能を表現する傑作
2. ある期間を通じて、またはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの
3. 現存する、または消滅した文化的伝統、または文明の、唯一の、または少なくとも稀な証拠
4. 人類の歴史上重要な時代を例証する、建築様式、建築物群、技術の集積、または景観の優れた例

パレンケ遺跡は、マヤ文明の神秘と偉大さを今に伝える貴重な遺産であり、これからも多くの研究者によって解明が続けられていくことでしょう。

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