パワーエリート

パワーエリートとは、社会学者のC.ライト・ミルズが提唱した概念で、高度に発達した独占段階における大ブルジョワジーの状態を指します。具体的には、1950年代のアメリカにおいて、大企業の経営者、軍の上層部、政府の上層部という「ビッグスリー」が、社会の意思決定権を独占している状況を指します。

ミルズによれば、これらの3つのグループは、互いに密接に結びつき、相互に地位を交換し合うほどの癒着関係にありました。この構造こそが、パワーエリートと呼ばれる所以です。この概念は、政治の領域に主眼を置いており、「無力な大衆」という対極的な存在を想定することで、その構造を際立たせています。

パワーエリートの特徴は、独占資本と国家権力の癒着、または独占資本による国家権力の私有化にあります。この癒着により、支配層は社会全体において、かつてないほどの影響力を持つに至ったとミルズは指摘しています。従来の社会構造では、それぞれの領域が独立して機能していたのに対し、パワーエリートの存在によって、社会全体が少数のエリート層によって動かされるようになったのです。

ミルズの理論は、単に個々の権力者の集団を指すのではなく、権力が組織化され、制度化された結果としてのエリート支配構造を問題とする点に特徴があります。この構造は、社会の階層構造を固定化し、大衆の意見が政治に反映されにくくなるという問題を内包しています。

参考文献として、佐藤毅氏の『社会心理学』(有斐閣、1971年)が挙げられます。この文献では、ミルズのパワーエリート論が社会心理学的な観点から考察されており、その概念の理解を深める上で有益な情報を提供しています。

パワーエリートという概念は、現代社会においても様々な形で議論されており、社会の不平等や格差を考察する上で重要な視点を提供します。特にグローバル化が進む現代においては、国家を超えた企業や組織が影響力を増しており、ミルズの理論は、より複雑化した現代社会の権力構造を理解する上で、重要な手がかりとなるでしょう。

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