パンアメリカン航空103便爆破事件

パンアメリカン航空103便爆破事件：ロッカビーの悲劇

1988年12月21日、スコットランドのロッカビー上空で発生したパンアメリカン航空103便爆破事件は、世界に衝撃を与えた大惨事でした。ロンドン発ニューヨーク経由デトロイト行きのボーイング747型機は、ロンドン・ヒースロー空港を離陸後、スコットランド上空で空中分解。乗員乗客259名全員と、地上にいた11名の住民が犠牲となりました。この事件は、リビア政府の関与が強く疑われ、国際的なテロ事件として大きな波紋を広げました。

事件の経緯

パンアメリカン航空103便は、フランクフルトからロンドンを経由してニューヨーク、そしてデトロイトへ向かう便でした。フランクフルト～ロンドン間はボーイング727で運航され、ロンドンでボーイング747-100「Clipper Maid of the Seas」に機材変更されました。ロンドンでは乗客乗員が追加され、予定より30分遅れてヒースロー空港を離陸。離陸から40分後、機体前部貨物室で爆発が発生し、空中分解しました。

爆発は、時限式爆弾によるものでした。プラスチック爆薬の一種であるセムテックスが、日本製のラジオカセットレコーダーに偽装され、スーツケースに隠されて機内に持ち込まれていました。爆発は、機体前方の貨物室で発生。もしフライトプラン通りに運航されていれば、大西洋上空で爆発していた可能性があります。

機体の残骸は広範囲に散乱し、特に両翼と中央胴体部分がロッカビー村に落下し、大きな被害をもたらしました。事故直後、生存者がいたという証言もありましたが、犠牲者数は270名に上りました。

捜査とリビアの関与

当初、イラン政府による報復、パレスチナ人テロリスト、IRAなど、様々な可能性が検討されました。しかし、捜査の進展により、残骸から発見されたタイマーの製造元が判明し、それがリビアに輸出されていたことが判明。さらに、爆弾が入れられていたスーツケースの衣服がマルタ島で購入されたことが判明し、リビア人2人が容疑者として浮上しました。

彼らはリビアの情報機関に所属し、1986年のアメリカによるリビア爆撃への報復として犯行に及んだとされています。この事件は、「テロに対する報復」がさらなる「テロによる報復」を招いたという皮肉な側面も持ち合わせています。犯行予告の電話が事件2週間前にアメリカ大使館にかかっていましたが、航空当局は警告を発出しませんでした。

2022年12月には、爆弾製造に関与した疑いで、元リビア情報機関員が拘束されました。また、2011年には、ムスタファー・アブドゥルジャリール前司法書記が、カダフィが事件を命令したと証言する報道もありましたが、証拠は示されていません。

リビアへの制裁と裁判

リビアは当初、容疑者の引き渡しを拒否。国連安全保障理事会は制裁決議を採択し、リビアは長年、国際社会から制裁を受けていました。しかし、最終的にリビアは容疑者をオランダに引き渡し、スコットランド法に基づく裁判が行われました。

2001年、メグラヒに終身刑、フヒマに無罪判決が下されました。メグラヒはその後控訴を棄却され服役していましたが、健康上の理由で釈放され、2012年に亡くなりました。

パンアメリカン航空への影響

この事件で、パンアメリカン航空は旅客と荷物の不一致という重大な過失を犯したことが判明。幹部が刑事訴追され有罪判決を受けたことも、経営破綻の遠因となりました。

まとめ

パンアメリカン航空103便爆破事件は、航空機テロの歴史においても大きな事件の一つです。多くの犠牲者を出したこの事件は、国家によるテロの恐ろしさを改めて認識させ、国際社会に大きな影響を与えました。この事件を教訓に、航空安全対策の強化、テロリズムへの対策がさらに重要になります。また、未だ判明していない事実や、事件の背景に関する更なる調査、研究も必要です。

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