パンカジ・カプール

パンカジ・カプールは、1954年5月29日にインドのパンジャーブ州ルディヤーナーで生まれました。インド映画界、特にヒンディー語の映画やテレビシリーズ、そして演劇の舞台で長年にわたり活躍する俳優です。その卓越した演技力は高く評価され、国家映画賞やフィルムフェア賞をはじめ、数々の栄誉ある賞に輝いています。世界映画の文脈においても、彼は最高の俳優の一人としてその名を挙げられる存在です。『Raakh』、『Ek Doctor Ki Maut』、『Maqbool』といった作品群は、彼のキャリアにおける代表作として知られています。

幼少期を故郷パンジャーブ州で過ごした彼は、成長するにつれて演劇の世界に強い興味を抱くようになります。やがてその情熱を追求するため、インドの権威ある演劇教育機関である国立演劇学校へと進みました。

私生活では、1979年に女優でダンサーのニーリマ・アジームと結婚し、ニューデリーで生活を送りました。二人の間には、後に俳優となる息子シャーヒド・カプールが1981年に誕生しましたが、残念ながら1984年に二人は離婚という道を選びました。その後、パンカジ・カプールは1988年に女優のスプリヤー・パータクと再婚し、この結婚からは娘サナー・カプールと息子ルハーン・カプールが生まれています。

国立演劇学校を卒業後、彼はまず約4年間を舞台演劇の世界で過ごし、その実力を磨きました。舞台俳優としてキャリアを積んだ後、映画の世界に活躍の場を移します。俳優業と並行して、監督としても才能を発揮しており、『Mohandas B.A.L.L.B.』をはじめとする74本もの舞台作品の演出を手がけています。

彼の映画俳優としてのキャリアは、1982年のシャーム・ベネガル監督作品『Arohan』で幕を開けました。同年には、リチャード・アッテンボロー監督による大作『ガンジー』にも出演し、マハトマ・ガンディーの第二秘書役を演じています。さらに、この作品のヒンディー語吹替版では、ベン・キングズレーが演じたガンジー役の吹き替えを担当するなど、多才ぶりを発揮しました。キャリア初期の1980年代は、『Mandi』、『Jaane Bhi Do Yaaro』、『Mohan Joshi Hazir Ho!』、『Khandhar』、『Khamosh』、『Chameli Ki Shaadi』、『Ek Ruka Hua Faisla』、『青春の終着点』といった、社会派や芸術性の高いパラレル映画への出演が中心でした。

しかし、1980年代後半からは、より多くの観客に届けられる商業映画にも活動の幅を広げます。1987年にはアクション映画『Jalwa』でナシールッディーン・シャーと共演。そして1989年、アーミル・カーン主演の『Raakh』での演技は高く評価され、国家映画賞助演男優賞を受賞するに至ります。同じ年にはパンジャーブ語映画『Marhi Da Deeva』にも出演し、活躍の場はヒンディー語映画だけにとどまりませんでした。1990年公開の『Ek Doctor Ki Maut』では国家映画賞審査員特別賞を受賞。1992年にはマニラトナム監督の話題作『ロージャー』に出演するなど、その存在感を国内外に示しました。2003年には、シェイクスピアの『マクベス』を翻案したヴィシャール・バードワージ監督作品『Maqbool』で、ダンカン王に相当するアッバジ役を演じ、再び国家映画賞助演男優賞に輝きました。その後も、『The Blue Umbrella』、『Dus』、『Halla Bol』といった多様なジャンルの作品に出演し続けています。

映画と並行して、パンカジ・カプールはテレビの世界でも重要なキャリアを築きました。1986年にテレビドラマに進出し、『Karamchand』で人気を博します。その後も、『Zabaan Sambhaal Ke』、『Neem Ka Ped』、『Office Office』など、数多くのテレビシリーズに出演し、その顔はインド中の家庭に知られるようになりました。特にコメディシリーズ『Office Office』では、彼のユーモラスな演技が多くの視聴者に愛されました。

俳優、監督として活躍する一方で、パンカジ・カプールは文学の分野にも足跡を残しています。1992年に執筆した自身の小説『Dopehri』を、2019年11月に出版し、作家としてもデビューを果たしました。

長年にわたり、舞台、映画、テレビと幅広いメディアで印象的な演技を披露し続けるパンカジ・カプール。その多才な活動と功績は、インドのエンターテインメント界において、彼が疑いなく最も優れた俳優の一人であることを証明しています。彼の豊かな表現力とキャラクターへの深い洞察は、今なお多くの作品に命を吹き込んでいます。

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