パーヴォ・ベルグルンド

パーヴォ・ベルグルンド（Paavo Allan Engelbert Berglund, 1929年4月14日 - 2012年1月25日）は、20世紀後半から21世紀初頭にかけて活躍したフィンランドを代表する指揮者の一人です。彼のキャリアは、特にフィンランドの国民的作曲家、ジャン・シベリウスの作品の解釈において極めて高く評価され、その分野における国際的な第一人者と目されました。

ヘルシンキに生まれたベルグルンドは、音楽の道をヴァイオリニストとしてスタートさせました。1949年には、フィンランド放送交響楽団にヴァイオリン奏者として入団します。その後、指揮活動へと移行し、1952年にはヘルシンキ室内管弦楽団の設立に携わるなど、活動の幅を広げました。1962年から1972年までの10年間は、古巣であるフィンランド放送交響楽団の首席指揮者を務め、オーケストラの発展に貢献しました。この間、1965年にはボーンマス交響楽団と共にシベリウス生誕100周年を記念する演奏会を開催し、早くもシベリウス解釈者としての名声を確立し始めます。

フィンランド国内での活動に加え、彼は国際的な舞台でも重要なポストを歴任しました。1972年には、イギリスのボーンマス交響楽団の首席指揮者に就任し、その楽団のレベル向上に貢献しました。また、1975年からは母国の名門、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督も務め、二つのオーケストラの要職を兼任する時期もありました。

ベルグルンドの指揮スタイルは、厳格でありながらも各パートの緻密な響きを追求し、作品の本質に深く迫るものでした。彼の指揮姿は、しばしば左手でタクトを握るという独特のものであり、その個性的なスタイルもまた記憶されています。

彼の最も特筆すべき功績は、ジャン・シベリウスの交響曲全集を、異なる主要オーケストラと三度も録音したことにあります。これは、同一指揮者によるシベリウス全集録音としては異例であり、彼のシベリウス作品に対する深い洞察と探求心を示すものです。最初の全集はボーンマス交響楽団と1970年代に、二度目はヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団と1980年代半ばに、そして三度目はヨーロッパ室内管弦楽団と1990年代後半に完成させました。これらの録音は、それぞれ異なるオーケストラの特性を生かしつつ、ベルグルンドならではのシベリウス像を提示しており、今なお多くの愛好家や評論家から参照されています。

交響曲全集以外にも、シベリウスの主要作品の録音を数多く残しています。クレルヴォ交響曲はボーンマス響、ヘルシンキ・フィルと二度録音。管弦楽曲集もボーンマス響、フィルハーモニア管弦楽団、ヘルシンキ・フィルと繰り返し録音を行いました。また、イダ・ヘンデルをソリストに迎えたヴァイオリン協奏曲の録音もよく知られています。

パーヴォ・ベルグルンドは、エストニア出身の著名な指揮者であるパーヴォ・ヤルヴィの名親でもありました。スウェーデン語の影響を受けた「ベルィルンド」や「ベリルンド」といった発音で呼ばれることもありました。

2012年1月25日、病により82歳でこの世を去りましたが、彼が残した数々の録音、特にシベリウス作品の解釈は、現代の演奏家や研究者にとって重要な遺産となっています。

主要なシベリウス作品の録音（抜粋）

交響曲全集
第1回：ボーンマス交響楽団（1970, 1973〜1977）
第2回：ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団（1984, 1986）
第3回：ヨーロッパ室内管弦楽団（1995〜1997）
クレルヴォ交響曲
第1回：ボーンマス交響楽団（1970）
第2回：ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団（1985）
管弦楽曲集
ボーンマス交響楽団（1970, 1972〜1978）
フィルハーモニア管弦楽団（1982）
ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団（1985, 1986）
ヴァイオリン協奏曲
* ボーンマス交響楽団、イダ・ヘンデル(ヴァイオリン)（1975）

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