ヒエロン2世

ヒエロン2世：シラクサの支配者、第一次ポエニ戦争とアルキメデスの逸話

ヒエロン2世（ギリシア語: Ιέρων Β΄）は、紀元前3世紀、第一次ポエニ戦争の時代にシラクサを支配した人物です。当初は僭主として権力を握っていましたが、後に民衆からの支持を得て王に擁立されました。彼の治世は、シチリアにおけるローマとカルタゴの勢力争い、そして科学者アルキメデスとの関わりによって特徴づけられます。

生涯

ヒエロンは元々、エペイロス王ピュロスの将軍でした。ピュロスがシチリアから去った紀元前275年、ヒエロンは軍隊によって総指揮官に任命され、シチリアに残ることを決意します。彼はシラクサの有力な市民の娘と結婚し、自らの社会的地位を確立しました。

当時、傭兵集団マメルティニが勢力を拡大し、メッシーナを簒奪してシラクサの領域に侵攻していました。ヒエロンは軍事行動を起こし、ミュラエ近郊でマメルティニを破ります。しかし、カルタゴが介入したため、マメルティニの本拠地であるメッシーナを陥落させることはできませんでした。

紀元前264年、ヒエロンは再びマメルティニを攻撃します。追い詰められたマメルティニはローマに支援を要請。ヒエロンはカルタゴ側の将軍ハンノと共同で戦いますが、ローマの執政官クラウディウス・カウデクスに敗北します。その結果、ローマとの条約を結び、タオロメニウム以西のシチリア島東岸の支配のみが認められました。

しかし、ヒエロンはその後、紀元前215年に死去するまでローマに対して誠実な態度を貫き、しばしばローマ軍の支援に兵力を提供し、強力な海軍を維持しました。

アルキメデスとの逸話

ヒエロン2世は、高名な学者アルキメデスと親族関係にありました。ヒエロンが金細工師に王冠の製作を依頼した際、金細工師が不正に金をごまかしているのではないかと疑い、アルキメデスに真偽の鑑定を依頼しました。

アルキメデスは、複雑な形状の物体の体積を正確に測定するという難題に取り組み、解決策を発見した際、喜びのあまり「エウレカ! エウレカ!（発見したぞ!）」と叫びながら、裸でシラクサ市内を駆け巡ったという逸話は非常に有名です。この逸話は、アルキメデスの科学的な洞察力と、ヒエロンの知的好奇心を象徴するものとして、今日まで語り継がれています。

第一次ポエニ戦争への影響

ヒエロンとマメルティニとの対立は、ローマとカルタゴの介入を招き、第一次ポエニ戦争の引き金となりました。彼の治世は、シチリアが地中海の覇権を争う大国間の紛争の舞台となる時代の始まりを告げるものでした。

まとめ

ヒエロン2世は、シラクサの僭主から王へと上り詰め、第一次ポエニ戦争の時代を生きた人物です。彼は政治的な手腕を発揮し、ローマとの関係を維持しながらシラクサの繁栄に貢献しました。また、アルキメデスとの逸話は、彼の知的な側面を物語っています。ヒエロン2世は、激動の時代にシチリアの歴史に名を刻んだ支配者として記憶されています。

関連項目

第一次ポエニ戦争
シュラクサイの僭主の一覧

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