ヒカゲヘゴ

ヒカゲヘゴ (日陰杪欏)

ヒカゲヘゴ（Sphaeropteris lepifera）は、ヘゴ科に属する多年生の木生シダであり、一般的にはモリヘゴとして知られています。日本では特に奄美大島以南の南西諸島でよく見られ、他にもアヤヘゴやカクレヘゴなどの名称でも呼ばれています。ちなみに、中国名は筆筒樹です。

特徴

ヒカゲヘゴの幹は直立しており、成長すると高さは7メートルを超え、基部の直径は20センチメートルに達することもあります。その幹には葉痕が逆八の字状に残り、葉柄基部との間には離層が形成されています。これに加えて、茎や葉柄の部分には、長さ約4センチメートルの薄い鱗片が密生しており、これらの鱗片は淡褐色からほぼ白色をしています。

葉の長さは最大で2.5メートルに達し、色は淡緑色から緑色で、葉柄は頑丈で通常は20センチメートルの長さです。葉身は倍羽状複葉であり、倒卵状長楕円形をしています。羽片は、特に大きなものでは長さ80センチメートルに達する一方、基部近くのものは小さくなります。小羽片は鋭い先端を持ち、細かい毛が生えています。

胞子嚢は小羽片の中肋寄りに位置し、包膜を欠く裸出型です。染色体数は2n=138です。

生育環境

このシダは沖縄の谷間や林中の斜面、光が差し込むやや湿った場所を好んで生育します。強い日差しの中でも育つことができ、樹冠を大きく広げるため、その姿は遠くからでも視認可能です。ヒカゲヘゴは、先に幹が細く伸び、その後ゆっくりと太くなるという成長パターンを示します。

分布

国内では南西諸島が主な生息地であり、国外では台湾やフィリピンに自生しています。特に台湾では、葉が異常な枯れを見せる萎凋病が報告されており、これが子嚢菌類の感染によるものと考えられています。フィリピンのバブヤン諸島やルソン島でも見られ、中国南部や香港、マカオにも自生しています。

分類と名称

ヒカゲヘゴは1841年にジョン・スミスによって最初に命名され、その後、1844年にウィリアム・ジャクソン・フッカーによって正式に記載されました。日本では長い間、広義のヘゴ属に分類されていましたが、分子系統解析の結果、別の属であるモリヘゴ属に位置づけられています。

利用

新芽は食材として利用され、特に新しく伸びた芽が80センチメートルほどの長さになったものが適しています。これらは茹でて調理し、天ぷらや酢の物として楽しむことができます。八重山諸島では、煮たヒカゲヘゴの芯は祭りに欠かせない特殊な食品として知られ、観賞用としても栽培されています。さらに、他の植物との共生関係を持ち、不定根は着生植物の栽培に利用されることもあります。

ヒカゲヘゴは、その独特な外見と利用法が共存し、自然環境にも文化的な価値を持つ植物と言えます。

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