木生シダ

木生シダ：樹木のようなシダ植物

木生シダは、その名のとおり樹木のような姿をしたシダ植物です。高く伸びる茎を持ち、中には20メートルに達するものも存在します。ヤシやソテツのような外観をしており、熱帯地域を中心に分布しています。しかし、この「幹」は、一般的な樹木とは異なり、肥大成長しません。つまり、太く成長する能力がないのです。この太い茎のような部分は、中心にある細い茎を、多数の根が密に覆うことで形成されています。

木生シダの特徴

木生シダの茎は、ほとんどの場合分枝しません。先端に大きな葉を輪生状につけ、下方の葉は枯れていきます。そのため、茎の下部は葉がなく、根が茎を覆っているため、茎そのものは見えなくなっています。ヘゴ科やタカワラビ科に多く見られ、特にヘゴ属のものはその代表例です。ヘゴ（Cyathea spinulosa）は、高さ4メートルに達するものもあれば、地域によっては小型のものも存在します。エダウチヘゴ（C. tuyamae）のように、分枝する種もあります。

幹の構造

木生シダの茎の内部構造は、他のシダ植物と同様、中心柱（維管束）から構成されています。多くの葉を密に付けるため、網状中心柱を持つものが一般的です。地上部に見える太い幹は、肥大成長ではなく、最初から太い茎を形成することで実現されています。そのため、茎自体は根元が細く、先端に向かって太くなる逆円錐形をしています。この構造では自身の体重を支えきれないため、多数の不定根が茎を覆い、支柱の役割を果たしています。これらの根は、特にヘゴでは、空中で露出しており、湿潤な環境下での水分吸収に役立っています。

偽幹：テムプスキア属の例

中生代白亜紀には、テムプスキア属（Tempskya）のような木生シダが存在していました。この植物の幹は、ヘゴのような構造とは異なり、中心に茎はなく、多数の細い茎が根と絡み合って一本の幹を形成していました。このタイプの幹は「偽幹」と呼ばれています。

分類と分布

木生シダは、主にヘゴ科とタカワラビ科に属します。ヘゴ科は600～650種、タカワラビ科は5～6属が存在し、多くは熱帯・亜熱帯地域に分布しています。しかし、ゼンマイ科、シシガシラ科、イワデンダ科などにも木生シダのような形態を持つ種がありますが、ヘゴ科やタカワラビ科のものほど大きくはなりません。また、古生代には、プサロニウス属（Psaronius）のような木生シダも存在していました。

日本の状況

日本には、ヘゴ科ヘゴ属の8種とタカワラビ科タカワラビ属の1種が生育していますが、そのうち木生シダとなるのはヘゴ属の6種のみです。ヘゴ、エダウチヘゴ、マルハチ、ヒカゲヘゴ、メヘゴ、クロヘゴなどがその例です。これらの種も、生育環境によっては木生にならない場合があります。

利用

木生シダはその独特の姿から観葉植物として利用され、ヘゴなどの食用にされる種もあります。また、茎のでんぷん質や、根が絡み合った幹（ヘゴ板）は建材として利用され、園芸素材としても人気があります。特にヘゴ板は洋ラン栽培などに不可欠なため、需要が過剰になり、種の生存を脅かしている面もあります。そのため、一部の種はワシントン条約で保護されています。

真の木本であった木生シダ

古生代には、アルカエオプテリスやリンボクといった、現在とは異なる木生シダが存在しました。これらの植物は、真の肥大成長を行う能力を持ち、樹高数十メートルに達する大木となっていました。これらの植物は、現在では見られない、真の木本と言えるシダ植物です。

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