ヒゲナガサシガメ

ヒゲナガサシガメ Serendiba staliana (Horvàth 1879)

カメムシ目のグループであるサシガメ科に分類される昆虫の一種です。その和名が示す通り、非常に長い触角を持つことが最大の特徴であり、体全体も細長い形状をしています。成虫の体長は約14mmほどになります。

形態的特徴

体は全体的に細長く、基調となる色は黄色で、その上に暗褐色の複雑な斑紋が配置されています。個体によっては全体が美しい橙黄色を帯びることもあり、その色彩の美しさから昆虫愛好家の間でも評価が高い種です。

頭部は暗褐色をしており、左右に突き出した黒く丸い複眼を持ちます。複眼の間には横方向の溝が見られます。また、複眼の近くには大きめの黄色い単眼がありますが、これらは互いに大きく離れて配置されています。複眼の前面の内側部分は黄色くなっています。

触角は文字通り非常に長く、糸のように細いです。色は一般的に明るい橙黄色をしています。この長い触角は4つの節から成り、中でも第1節が最も長く、それに次いで第3節が長くなっています。

胸部の背面、特に前胸背板は中央を走る横溝によって前後に二分されます。前側の部分は褐色で、中央に縦の溝があります。一方、後半部分は淡黄色を帯び、中央の左右に太い暗褐色の筋状の模様が入ります。また、前胸背板の左右の後端には、鋭い棘状の突起が突き出しています。

小楯板は先端が尖った三角形で、淡黄色をしていますが、基部側は暗い色合いです。

前翅は腹部の後端を大きく越えるほど非常に長く伸びています。翅の根元の硬い部分（革質部）は暗褐色で、先端の薄い部分（膜質部）は淡褐色でわずかに半透明になっています。翅の脈は暗褐色で目立ちます。

体の腹面や歩脚は一様に黄色です。歩脚もまた細長く、表面には細かい毛が密生しています。特に腿節は、体色と同様に橙黄色を帯びることがしばしばあります。

分布と生息環境

日本では本州、四国、九州、そして対馬に分布が確認されています。国外では中国にも生息しています。

生息環境としては森林が挙げられますが、樹上で見られることは多いわけではありません。むしろ、一般的な観察場所としては、山地の麓や丘陵地帯でよく見られます。

分類上の位置づけ

本種の学名については、過去には Endochus stalianus として長く認識されていましたが、現在は Serendiba staliana という学名が正式に用いられています。Serendiba属は、アジアの東部から東南部にかけて分布する5種のみを含む小さなグループであり、日本国内にはこのヒゲナガサシガメ1種だけが知られています。

サシガメ科の中には、本種と同様に細長い体を持つ種類が他にも存在します。また、近縁のマキバサシガメ科にも似た形態の種がいますが、ヒゲナガサシガメは特有の体色や斑紋によって、これらの類似種と識別することが比較的容易です。特に名前が似ている種にキベリヒゲナガサシガメ (Euagoras plagiatus) が挙げられます。この種も確かに細長い体型をしていますが、その「黄縁」という和名とは異なり、実際には赤い斑紋を持つこと、そして分布域が日本の南西諸島以南に限られる点で、ヒゲナガサシガメとは明確に区別されます。

参考文献：

• - 石井悌他編, 『日本昆蟲圖鑑』, 北隆館, 1950.
• - 安永智秀他, 『日本原色カメムシ図鑑』, 全国農村教育協会, 1993.
• - 石川忠他編, 『日本原色カメムシ図鑑 第3巻』, 全国農村教育協会, 2012.
• - 井上暁生, 須田研司, 「② 自然教育園における2013～2016年の昆虫類調査の状況と報告」, 自然教育園報告 第48号: p.109-123, 2017.

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